『半沢直樹』は『デビルマン』のよう 半沢に襲いかかるシーズン2の“悪役”たちを振り返る

 オネエキャラ黒崎は、シーズン1から銀行の敵・金融庁のエース。徹底した内部調査で不正を暴き出す面倒な人物として抜き打ち調査を行ってきた。シーズン2では、金融庁から異動して、やたら長い肩書の「証券取引等監視委員会事務局証券検査課統括検査官」となって再登場。その重箱の隅をつつくねちっこさは健在であった。黒崎は大和田に次ぐ人気キャラ。この人の場合は悪人ではなく不正を絶対見逃さない人なのだが、その正義感の表現の仕方が度を越しているし、部下にセクハラぽいことも行うのもいかがなものかというところ。

 シーズン2の後編にも登場するが金融庁に復帰したのであろうか。部下・古谷役で声優の宮野真守が登場することにもワクワクする。

 前半のラスボスかと思った副頭取・三笠洋一郎(古田新太)は登場時、シャーペンをカチカチやっていて何かありそうな雰囲気だったが、第2話でシャーペンを早くもへし折って、結果的に不正を暴かれあっさり自滅してしまった。古田新太のなんかありそうな感じを振りまくミスリード作戦の成功。

 シーズン2では小物キャラも大活躍。半沢と同じく東京セントラル証券に出向していた諸田祥一(池田成志)や三木重行(東京03 角田晃広)の小物感に満ち溢れた裏切り行為は笑わせてもらった。

 基本、みんな人間くさいのである。隠し事をしてはすぐバレるし、大声を出して恫喝して相手を怯ませることで誤魔化そうとする。でも半沢が悪事のすべてを調べて有無を言わせないうえ、迫力も倍返しで反撃できなくなってしまうのだ。

 さて。これから展開されていく後編はどうだろう。伏魔殿と呼ばれる帝国航空に、東京中央銀行から出向していた財務担当・永田宏(山西惇)は私腹を肥やしていたが、まんまと半沢に見破られあえなく撃沈。半沢に「腐った肉のニオイがする」なんて言われて散々だった。

 問題は政治家たち。帝国航空の赤字を銀行の債権カットによって救済しようとしている。内閣総理大臣・的場一郎(大鷹明良)、幹事長・蓑部啓治(柄本明)、国土交通大臣・白井亜希子(江口のりこ)、白井率いるタスクフォースチームのリーダー・弁護士の乃原正太(筒井道隆)、議員秘書・笠松茂樹(児嶋一哉)等々、かなりの曲者ぞろい。大物政治家たちは大声や顔芸のような力技では済まなそうだが……。半沢直樹は彼らとどのように闘うのか。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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