『親バカ青春白書』は意外とリアルな“日常系”ドラマ? “父と娘”ドラマの変遷から考察

“父と娘”ドラマの変遷で紐解く『オヤハル』

 「父と娘」のドラマには、大きく分けて3つのパターンがある。

 1つは、『池中玄太80 キロ』や『パパドル!』のように、「シングルマザーとの結婚」を機に、血のつながらない他人である娘と突然家族になるパターン。

 2つ目は、妻との死別で『パパは年中苦労する』『僕と彼女と彼女の生きる道』のように、妻が出て行ってしまったことで、娘と向き合うパターン。

 3つ目は、『パパとなっちゃん』『お父さんは心配症』『パパがも一度恋をした』から連なる一番の王道で、『親バカ青春白書』はまさにその系譜にある。

 そうした流れの中、父親が娘にGPSを持たせたり、同じ大学の同じ学部に入部してしまったりする「親バカ」ぶりはさらに進化(悪化?)している。しかし、大きな共通点は、娘がそんな父をちっとも嫌がってはいないこと。

『親バカ青春白書』(c)日本テレビ

 『お父さんは心配性』の作者・岡田あーみんは、親バカの父を嫌がらず、父に負けず劣らず心配症の彼氏も持ちながら、唯一まともでいられた娘を「一番の変人」と語っていた。

 同様に、永野芽郁演じる『親バカ青春白書』の娘・さくらも、どこにでもついてきて邪魔をする父のことを全然嫌っていない。さくらの場合は、ちょっと変わっているところもあるが、かなり「天然」であることも父にとっては幸いしているだろう。

 また、娘が思いを寄せる畠山(中川大志)は、小説家である自分のファンであることから、奇妙な三角関係にあるのも新しい。

『親バカ青春白書』(c)日本テレビ

 さらに大きな特徴は、みんながドン引きするほどの親バカ・賀太郎(ムロツヨシ)が、さくらの仲間たちにツッコまれたりしつつも、普通に馴染んでいること。これはムロツヨシの特異のキャラクターが成立させるものに見えるかもしれない。しかし、実はいまどきの20歳前後の子と親の関係においては、案外「あるある」でもある。

 実際、自分の周りにも、我が子の友達とLINEのやりとりをしているような親がちょこちょこ存在する。

 理由は、昔に比べてきょうだいが少ないことなどから、親子の距離が近くなっていることが一つ。また、親の感覚が若いこともあるだろう。さらに、子どもたちが親をうっとうしがる時期を、小学校高学年~中学生くらいで済ませていて、高校生くらいからは友達の親と大人同士の感覚で話せる子がたくさんいることもある。

 「行きすぎで過干渉の親」に悩まされ続ける子どもが多数いる一方で、そんな親をフラットに受け入れられる子どもたちの土壌ができているのは、現代の一つのリアル。福田雄一作品ならではのドタバタコメディでありつつ、意外とリアルな「父と娘」の“日常系”ドラマもであるのだ。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
『親バカ青春白書』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:ムロツヨシ、永野芽郁、中川大志、今田美桜、戸塚純貴、小野花梨、谷口翔太、野間口徹、新垣結衣ほか
脚本統括・演出:福田雄一
脚本:穴吹一朗ほか
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:高明希、鈴木大造(クレデウス)
協力プロデューサー:白石香織(AX-ON)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/oyabaka/
公式Twitter:@oyabaka_ntv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる