10年周期で甦る名作アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』 時代を超える普遍的な魅力とは

 世にアニメブームが巻き起こっていた80年代、『鬼太郎』は三度テレビに戻ってきた。1985年放送の第3期だ。

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 当時のアニメ誌の記事によると、テレビ局側から「2期のような怖い内容にしないでほしい」と要望があったそうで、鬼太郎は人間の少女・天童ユメコを守って戦うヒーロー的な立ち位置になった。砂かけ婆、一反もめんなど鬼太郎に加勢する鬼太郎ファミリーが固定化されたのも本作からで、第2期ほどの暗さはなくなっている。バンダイがスポンサーに付いたことから、放送期間中に鬼太郎の住み家であるゲゲゲハウスをはじめ、ソフビ人形、鬼太郎が使うオカリナといったキャラクター商品が多く発売されたのも特徴。水木しげるは第3期の内容について「4本に1本は面白いアレンジだが、2本は首を傾げる出来で、1本は改悪」と評しているが、放送期間は約2年半に及び、映画も4本制作されて商業的には成功を納めている。

 ヒーロー然としたポジティブなキャラ付けが行われた第3期から一転、原点回帰の怖い鬼太郎を目指した第4期が1996年から始まる。エンディングテーマには第1期、2期同様の「カランコロンの歌」が復活した。トピックスとして第101話の脚本に、熱心な水木しげるファンで知られる小説家の京極夏彦を迎えたことが挙げられる。京極夏彦のデビュー作に登場するキャラクター“憑き物(つきもの)落としの京極堂”を、一刻堂という名でセルフパロディ的に登場させ、自らその声を演じた第101話は、わざわざこのエピソードを特集した豪華本『水木しげる&京極夏彦 ゲゲゲの鬼太郎解体新書』(講談社)が発売されるほどの注目度であった。

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 21世紀に復活した、2007年放送開始の『鬼太郎』第5期は、妖怪たちが妖怪横丁という下町で生活しており、アマビエ、かわうそ、ろくろ首など横丁での露出が多い妖怪たちは、子どもの視聴者に親しみやすいコミカルな描き方をしている。放送2年目からは全国都道府県から妖怪四十七士を選出するエピソードが続いたが、結果的に妖怪が48体集まらないまま番組は終了した。ただし放送期間中に公開された映画『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』で、大ピンチの鬼太郎を助けるべく、全国から妖怪四十七士が集合する描写がある。

 鬼太郎の声に『名探偵コナン』のコナン役で有名な高山みなみを起用したり、さまざまな人間界のアルバイトを体験する可愛らしいネコ娘のヒロインぶりを強調するなど、男女のアニメファンからバランスよく親しまれたシリーズだっただけに、惜しまれながら全100話にわたる放送を終えた。

 こうして妖怪ブームの真っ只中だった60年代のテレビ界に現われた『鬼太郎』は、世の中の文明進化に合わせて、携帯電話(ガラケー)、コンビニ、スマートフォン、SNSといったアイテムを取り入れながら、年代をまたいで多くの視聴者を魅了してきた。鬼太郎は少年の外見のまま何十年も生きている設定が第5期、6期で触れられているので、そんな妖怪族の彼にとって時代の移り変わりなど一瞬の出来事なのかもしれない。『鬼太郎』は10年周期で復活し、それぞれの時流を捉えては、作品に反映させてきたのがシリーズを息長く続けられた特徴だろう。時には怖く、時にはライトに。第6期を手がけた永富プロデューサーが「皆様が鬼太郎や妖怪のことを忘れないでいてくだされば、きっとまた下駄の音が聞こえてくるはずです」と語っているように、いつの日か再び『鬼太郎』は帰ってくるだろう。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

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