10年周期で甦る名作アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』 時代を超える普遍的な魅力とは
漫画家の水木しげるが1950年代に『墓場の鬼太郎』のタイトルで発表し、改題と改稿を重ねて息長く続いた代表作『ゲゲゲの鬼太郎』(以下『鬼太郎』)。この漫画は1968年に東映動画(現・東映アニメーション)によって初めてテレビアニメ化された。それ以後、『鬼太郎』は約10年の間隔で幾度もアニメ界に甦り、現時点での最新作は2020年3月に放送を終えた6回目のアニメ化作品である。この『鬼太郎』6期が、第57回ギャラクシー賞のテレビ部門特別賞を受賞したニュースが報じられたのが6月のこと。ギャラクシー賞とは、放送批評懇談会が放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体に与えるもので、『鬼太郎』の受賞はアニメ作品では初の快挙であると話題になった。
『鬼太郎』は再アニメ化のたびにスタッフとキャストが入れ替わるのが特徴だが、作風もその都度、放送される時代の世相、風俗を取り入れた内容になりやすい。2018年放送開始の第6期はスマートフォンをはじめ、ネット社会が当たり前のように存在する世界観である。YouTuberで有名なヒカキンがヒカキン本人役として出演するなど、子どもにも親しみやすい現代ネタが多く採り入れられた。また、人間側のオリジナルキャラクター犬山まなを登場させることで、「妖怪と人間は互いに過干渉すべきではない」という考えの鬼太郎に、徐々に変化が生まれたり、人と妖怪の在り方を問いかけるドラマ性が過去のシリーズより強くなっている。妖怪側のレギュラーキャラ・ねこ娘は等身の高い大人の女性寄りにデザインされ、そんな彼女を「ねこ姉さん」と呼んで慕う、まなとねこ娘の交流は過去のシリーズには見られない本作特有の魅力となった。
第6期のシリーズ全体は、2クール(半年)毎の強敵を設定し、縦軸を通す章立ての構成をする中で、合間に1話完結の単独エピソードを織り交ぜてバラエティ豊かに展開していった。この単独エピソードでは70年代に放送された第2期の中から、歴代『鬼太郎』の中でもトラウマエピソードと呼ばれる恐怖色の濃い話をリメイクする試みがあり、メインターゲットの子どもはもとより、親世代の視聴者も唸らせる話数が頻繁に出てきた。
さてここでアニメの『鬼太郎』の歴史を少し振り返ってみよう。テレビに漫画に、妖怪ものがブームだった1968年に放送開始された第1期は、まだカラーテレビが普及する前だったのでモノクロで制作されている。『週刊少年マガジン』(講談社)に連載された原作漫画を消化しながら、鬼太郎のキャラクターは人間界に仇なす悪い妖怪を退治する正義の味方のポジションで、子どもが親しみやすい作風として描かれている。水木しげる自らが作詞を担当したオープニングテーマは、アレンジと歌手を変えながらも50年間ずっと使われてゆくこととなった。
モノクロ版の放送終了から2年後の1975年にカラー制作の第2期がスタート。原作のストックが少なくなったことから、鬼太郎が登場しない怪奇短編を脚色したエピソードが多く制作されることとなる。この効果によって、公害や物質文明に警鐘を鳴らしたり、強欲な人間が因果応報で悲惨な末路を辿る風刺性の強いシリーズになったのも特徴。第2期の中から第35話『イースター島奇談』、第41話『霊形手術』、第43話『足跡の怪』が、第6期でリメイクされている(『イースター島奇談』は、リメイクというより後日譚のような体裁)。