奈緒の笑顔に悶絶! 片思い経験者の心を震わす映画『僕の好きな女の子』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、“実は編集部イチの恋愛体質男”の異名を取る石井が『僕の好きな女の子』をプッシュします。

『僕の好きな女の子』

 新型コロナウイルスの感染拡大に加え、日本全国が猛暑日続きとなっているこの8月中旬。かつての日常が遠い過去になりつつあるい今、ドラマや映画で触れる日常描写に今までとは違う哀愁を感じずにはいられません。そんな状況の今、もしかしたら数年は味わえないであろう日常の描写、そして悶絶するような恋を体験できる映画が『僕の好きな女の子』です。

 原作は又吉直樹さんのエッセイ。『火花』『劇場』と原作小説だけではなく実写映像化作品も高い評価を得ていますが、間違いなく本作もそこに続く一作だと思います。

 脚本家の加藤(渡辺大知)には頻繁に会う“友達”・美帆(奈緒)がいる。2人で井の頭公園を散歩して、2人でご飯を食べてお酒を飲んで、2人で凧揚げもして、どうでもいいやり取りをLINEでもする。傍から見れば完全に“恋人”。加藤は友達以上の関係になりたいと願うが……というのが本作のあらすじです。友情と恋愛、友達以上恋人未満といったテーマの作品は、古今東西あらゆるところで作られてきました。観客が自分ごととして、あるいは身近な存在として、作品を楽しむためには、中心となる2人が魅力的であることが必須要素ですが、本作はそのハードルを軽々とクリアしています。それは映画冒頭の数分を観るだけでも感じてもらえるはず。

 とにかく、とにかく、美帆を演じる奈緒さんが可愛い! 待ち合わせ場所に隠れながら(しかも相手には気づかれているのに)近づいていき、「目潰し!」と言いながら絡んでくる。しかも喉が乾いたからと言って、謎の瓶に入ったジュースをカバンから取り出してくる。文字にして並べると、いわゆる“不思議ちゃん”とも言えるかもしれないのですが、映像を観れば奈緒さんの愛嬌たっぷりの姿に虜にならずにはいられないと思います。

 弘中綾香アナと田中みな実さんによる番組『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)が人気を集めたように、世の中には意識的にせよ無意識的せよ、“あざとさ”を武器としている人がいます。それが行き過ぎると“小悪魔”なんて呼ばれたりするわけですが、本作の美帆はギリギリのバランスでそこには至っていません。奈緒さん自身が持つ愛嬌、受け手である加藤を演じる渡辺さんの柔らかさ、そして2人を演出した玉田真也監督の見事なアンサンブルの賜物です。そして、美帆が魅力的に映れば映るほど、美帆に恋する加藤の行動がじれったくもあり、苦しくもあります。

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