劇場版『鬼滅の刃』は落ち込む映画界にとって起爆剤になるか 煉獄杏寿郎の活躍にかかる期待

 『劇場版 鬼滅の刃』を含むアニメ映画はもちろんのこと、映画興行界は現在、世界中を脅かす新型コロナウイルス拡大の影響で苦境の只中だ。2020年3月に公開予定だった劇場用アニメ『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が新型コロナ拡大の影響を受けて、配給元の東宝は逸早く公開延期を決定したが、これに追随するかのようにディズニー&ピクサーの『2分の1の魔法』や東映の『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』、松竹の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なども次々と公開延期を発表。春休みからゴールデンウィーク向けに予定されていたアニメ作品の上映が、ほぼ例外なく公開スケジュールの変更を余儀なくされた。公開が先送りになったのはアニメ映画だけに限った話ではなく、映画興行界自体が大きなダメージを受けることになったのだ。そんな中、待望の公開日が発表されたのが『劇場版 鬼滅の刃』というわけである。

 テレビシリーズ放送終了後も、さまざまな企業コラボやコンビニ各社のタイアップなどを経て、ブームが今なお高まり続ける『鬼滅の刃』。その中でもファン人気の高い煉獄杏寿郎が大活躍する劇場版は、春から続く新型コロナ騒動で元気がなくなった映画界に、再び活気を取り戻す起爆剤になるのではなかろうか。『鬼滅の刃』と同じくアニプレックスが配給し、2017年に大ヒットを記録した『劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(以下『劇場版SAO』)は150館の規模でスタートし、日本国内の興行収入は25億円を記録した。『劇場版 鬼滅の刃』は現在、『劇場版SAO』の倍以上にあたる360館で上映予定である。ソーシャルディスタンスの観点から、座席をひとつずつ開けての指定席販売になるため、『劇場版SAO』公開時のスクリーン収容人数と変わることは必至だが、それにしても歴代アニプレックス映画の中では、驚くべき上映館数の規模といえる。『劇場版 鬼滅の刃』の配給がアニプレックス単独ではなく、東宝との共同という強みもあるのだろう。

 奇しくもコロナ禍の影響で3月の公開が延期されていたufotable制作のアニメ映画『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]』の完結編が8月に封切りとなる。『Fate/stay night』も『鬼滅の刃』と並ぶ同社の看板作品といえるアニメだけに、夏から秋にかけてufotableのアニメ映画が、どれだけ興行面で健闘するかが注目されそうだ。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
10月16日(金)全国公開
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔
原作:吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/
公式Twitter:@kimetsu_off  https://twitter.com/kimetsu_off

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