キャスティングはひらめき重視? 新井順子プロデューサーが明かす、『MIU404』の全容

綾野剛が引き寄せた村上虹郎のゲスト出演

――第6話では、志摩の元相棒・香坂役に村上虹郎さんも出演されましたね。

新井:香坂はもともと、あんなに出てくる予定ではなかったんですよ。でも、野木さんが台本書いたら「ごめん、めっちゃ出てくる」って(笑)。もともと虹郎くんの雰囲気って、『MIU404』に合いそうだなって思っていて、そんなときに「香坂に虹郎くんってバランスいいよね? 源さんと並んだときにも」と。

――ひらめいた。

新井:思いついちゃった。しかも、ちょうどその何週間か前に、綾野さんが「“現場どうですか?”って、虹郎からメールがあった」という話を聞いていて。そうか、虹郎さんと綾野さんはプライベートでも仲がいいのね、ってずっと頭の中にあったんですよ。

――でも、作中では……。

新井:絡ませなかったですね(笑)。でも、あのとき綾野さんが虹郎さんの話をしてなかったら、香坂=村上虹郎はなかったかもしれないですね。

――実際に、村上さんの様子は思っていたとおりでしたか?

新井:香坂って必死なんですよね。なんとか手柄を上げて、志摩に追いつかなきゃっていう、焦りみたいなのがあるんですけど。村上さんの自分で犯人を追い詰めているんだっていう高揚した表情とか。それが実は犯人は別の人だったみたいなことを言われたときの顔が良くて。頑張りたいって思いが空回りして、ついついウソをついてしまうようなことって、結構誰にでも陥りがちなことだよなとも思っていて。本当にスイッチという言葉が頭に浮かぶんです。「あのとき、ああしてれば彼は助かったんじゃないか」みたいなことを、志摩もずっとリフレインしてるんですよね。切ない……誰もが現実の後悔と重なってしまうと思います。

――そうですね。悲しい別れにはいつも後悔がつきまといます。ピタゴラ装置が登場したあたりから「スイッチ」が物語のキーになってきたなと思っているんですが、もともとドラマのテーマとしてあったものだったんですか?

新井:いや、そういう感じではなかったと思うんですが、書いているうちに3話あたりから「誰に出会うか、出会わないか」というのが物語の中で色濃く出てきた感じです。6話の「俺がここに来たのだってスイッチになってる」という伊吹のセリフが泣けました。志摩の独り言のように「伊吹みたいなのが相棒だったら……」の背中にもまたグッときて……。

――本当に、真に迫った名演技でした。

新井:キャストに助けられました。

気になるラストとアフターコロナに作りたいドラマとは?

――さまざまなスイッチがある物語が、どこへと向かっていくのか。もう着地点は決まっていますか?

新井:ラストはだいたい見えています。でもどうとでもなるんですよね。4機捜が解散することもできるし。続けることもできるし。刑事ドラマにありがちな誰かが死んでしまういう可能性もあるじゃないですか。でもとにかく悲しい結末にならないように。やっぱり「毎週見て楽しかった」って終わらないとダメだなとは思っています。

――野木さんが「新井プロデューサーはいい意味で視聴者の視点が変わらない」とおっしゃっていたましたが、その秘訣というのはあるんでしょうか?

新井:ないです(笑)。本当にただの視聴者なので! もう野木さんの台本が高度で、神様の視点というか、雲の上の人が書いてるから。だから、ちょっと地上に降りてもらっていいですか? 私、今地上にいるのでって。偏差値をグ〜〜っと下げてもらう感じです。で、その間にいるのが監督なんです(笑)。

――そのバランスが『アンナチュラル』チームの強みなんでしょうね。

新井:監督は大変だと思います。野木さんの台本を映像化するのって、難しいんです。それこそいろんなスイッチがあるので。尺を54分にはめるために、セリフをカットしないといけない部分も出てきたときに、このセリフは、あっちのセリフと対になってるから切れない……とか。ここは、前のシーンのここにかかってるから言い方を、対にしていかないと……みたいなことがたくさんあって。埋め込まれているものに気づかないとツルッていっちゃう。それが出来上がるのを楽しみに待ってるという意味では、ずっと視聴者なんです。

――なるほど。では今後、どういうドラマを作りたいというものはありますか?

新井:相変わらず、企画を出しまくってるんですけどね。箸にも棒にもかからない方が多いです(笑)。やりたいことはたくさんあるので、出し続けるしかない。

――今進んでいるものはあるんですか?

新井:あります。いつできるかは分からないけど、個人的に観てみたいのは、コロナ禍で注目を集めた医療従事者の方々のドラマですね。医師だけじゃなくて、看護師さんとか。おうちに帰らず、ずっと泊まり込んで患者さんと向き合っているという話も聞こえてきたじゃないですか。家族がいるにも関わらず、他人を助け続けるって。どういう使命感でやられているのか。医師モノドラマだと、とある患者が現れて、この人はどういう病気だから、こうするみたいな話が多いですが、もう患者が出てこない回もあるくらい、医師や看護師さんたちの人生そのものを深掘りしていく物語にしたいですね。

――ぜひ観てみたいです。

新井:みんなが、このマスクを外した日に実現するドラマ。早くそんな日が来ることを願っています。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

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