『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』インタビュー
井之脇海、薬剤師を演じて気づいた感謝の思い 「『ありがとう』が増えてくれたら」
映画・ドラマにその姿を見つければ、その作品が“信頼できる”と思わせてくれる俳優・井之脇海。黒沢清監督作『トウキョウソナタ』でキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞してから12年、数多くの作品で輝きを放ってきた。そんな井之脇の最新作が現在放送中のドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)だ。
井之脇が演じるのは、萬津総合病院薬剤部のムードメーカー・羽倉龍之介。学生役が多かった井之脇も、近年は社会人の役柄が増えてきた。“チーム”としてドラマを作り上げる上で井之脇は何を大事にしているのか。(3月某日取材)【インタビューの最後に井之脇海のサイン入りチェキプレゼントあり】
人が人を思うことの素晴らしさを描いた物語
ーー病気に罹れば薬剤師さんに誰もが接するわけですが、ここまで大変な仕事をしていたとは本作を観て初めて知りました。
井之脇海(以下、井之脇):タイトルを直訳すると「感謝されない」ですからね。僕もこうして演じさせていただくまで、薬剤師の方がどんな仕事をされているのか、まったく知らなかったです。ドラマなので脚色はありますが、薬剤師の方々がいかに患者さんと向き合い働いているのか、それが少しでも視聴者の方々に届くことができればと思っています。キャスト・スタッフの皆で、いかに薬剤師としての真実味や人間性をもたせられるか日々頑張っています。
ーー新型コロナウイルスの感染が広がる中、病院を舞台とした作品に出演するプレッシャーもあるかと思います。井之脇さんは本作をどのような物語だと感じていますか?
井之脇:薬剤師の話ではありますが、人が人を思うことの素晴らしさを描いた物語だと思います。薬剤師は患者さんの今とそして未来を考えて、最後の砦として責任を持って患者さんに向き合っていく。患者さんはもちろん、ときには医者のことを思っていたり、薬剤師同士のことを思っていたり、登場人物たちのいろんな思いが本作には詰まっています。薬剤師の仕事を本作を通して知ってもらえたら嬉しいですし、心の中でもいいので、薬剤師の方々に「ありがとう」と思ってくださる方が増えてくれたら、このドラマができた意味があるのではないかなと思います。
ーー井之脇さんが演じる羽倉はチームのムードメーカーという役割です。NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』や、NHKよるドラ『伝説のお母さん』、TBS日曜劇場『集団左遷!!』など、組織の中で緩衝材となるような役をいつも巧みに演じているイメージがあります。
井之脇:確かに誰かを支える役が多いですね(笑)。お芝居は一人で完結するものではなくて、一緒に演じる方とどう高め合えるかが一番大事だと思っています。もちろん、自分もいいところを見せたい思いはありますが、一緒に演じる方が魅力的に映ったときは自分もよく見えると思うので。そんな役をいただけているのも、製作の方々にそういったところを評価していただいてるからだと思うので、非常にうれしいです。台本を読んだとき、羽倉くんはすぐにイメージができた役柄でした。ただ、羽倉くんは人との距離感の掴み方がうまい子なのですが、僕自身はあまり得意ではなくて……。ムードメーカーとして、現場でいかに嘘がなく演じることができるか、今は試行錯誤しているところですね。
ーー医療ドラマは専門用語が多く飛び交います。薬剤師として覚える量も多いのでは?
井之脇:そうなんです。以前、銀行員の役を演じたときは、自分自身も銀行は使うので比較的イメージもしやすかったんです。でも、今回は薬の名前も病気の名前も、なじみがあるものではありません。カタカナの専門用語は覚えることも難しくて大変さはあります。ただ、“覚える”こと自体は誰でもできることです。薬と薬の間にどんなストーリーがあるのか、羽倉としてどう薬と向き合ってきたのか、それを考えて覚えなければ意味がありません。日々撮影を行う中で、薬剤師としての説得力をいかに積み上げていけるかを考えています。