神木隆之介や石田ゆり子、当時14歳の高橋一生も ジブリ作品の意外な声優起用を振り返る

ジブリ作品を足がかりに多彩に活躍

 そして『千と千尋の神隠し』は前述の通りだが、千尋役の柊瑠美は『崖の上のポニョ』(2008年)や『コクリコ坂から』(2011年)にも出演。女優として『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)や、NHK Eテレ『ニャンちゅうワールド放送局』に3代目お姉さんとして出演した経歴を持つ。続いて『ハウルの動く城』(2004年)は、ハウル役の木村拓哉と倍賞千恵子の出演が大きな話題を集めた。ほかに美輪明宏、神木隆之介、我修院達也、安田顕と大泉洋も出演しており、まさしくジブリオールスターズとも言えるキャスティングだ。神木はこの『ハウル』以降、ジブリ作品『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)に出演したほか、『サマーウォーズ』(2009年)や『君の名は。』(2016年)といったヒット作に出演して、俳優の枠を越えた活躍は広く知られている。

 『ハウル』から4年を経て公開された『崖の上のポニョ』(2004年)は、それまでとはキャスティングががらりと変わった。長嶋一茂や所ジョージ、山口智子、天海祐希、矢野顕子などが出演。当時12歳で主人公のポニョを演じていた子役の奈良柚莉愛は、昨年からよゐこの濱口優がプロデュースを務める名古屋を拠点としたアイドルグループのVery Merryの神月柚莉愛として、アイドル活動を行っているというのは意外な事実だろう。

 その後『借りぐらしのアリエッティ』には志田未来、藤原竜也、樹木希林が、『コクリコ坂から』(2011年)では主人公・松崎海を長澤まさみが演じ、海の妹の空を現在声優として活躍する白石晴香が演じ、彼女のデビュー作となった。そして面白いところでは、『風立ちぬ』(2013年)で、主人公の堀越二郎の声優を『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明が務めたことだろう。庵野の起用にはファンの間で賛否が挙がったが、「声ではなく存在感で選んだ」と後に語られている。

 ジブリ映画のキャスティングにおいて、声の存在感はあまり関係ない。必要なのは演技力と、本人の持つ雰囲気がいかに役の雰囲気と合っているかだ。役の年齢により近い年齢の人物がキャスティングされ、もし演技が拙かったとしても、雰囲気が合っていればそれが優先される。誰が演じているか気にせず作品に没頭できるのは、声の存在感が役を邪魔していないからこそ。それでもなお、存在感がにじみ溢れて役とともに強く印象を残すのが、ジブリ作品のキャストの声の力だ。それが名作を、名作たらしめているのかもしれない。

■榑林 史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

■公開情報
『風の谷のナウシカ』
公開中
原作・脚本・監督:宮崎駿
プロデューサー:高畑勲
音楽:久石譲
声の出演:島本須美、納谷悟朗、松田洋治、永井一郎、榊原良子、家弓家

制作:トップクラフト
(c)1984 Studio Ghibli・H

『もののけ姫』
公開中
原作・脚本・監督:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石譲
主題歌:米良美一
声の出演:松田洋治、石田ゆり子、田中裕子、小林薫、西村雅彦、上條恒彦、美輪明宏、森 光子、森繁久彌
(c)1997 Studio Ghibli・ND

『千と千尋の神隠し』
公開中
原作・脚本・監督:宮崎駿
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:久石譲
主題歌:木村弓
声の出演:柊瑠美、入野自由、夏木マリ、内藤剛志、沢口靖子、上條恒彦、小野武彦、菅原文太
(c)2001 Studio Ghibli・NDDTM

『ゲド戦記』
公開中
原作:アーシュラ・K・ル=グウィン
原案:宮崎駿
脚本:宮崎吾朗、丹羽圭子
監督:宮崎吾朗
プロデューサー:鈴木敏夫
音楽:寺嶋民哉
主題歌:手嶌葵
声の出演:岡田准一、手嶌 葵、田中裕子、香川照之、風吹ジュン、内藤剛志、倍賞美津子、夏川結衣、小林 薫、菅原文太
(c)2006 Studio Ghibli・NDHDMT

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