塚原あゆ子が明かす、毎回違う味で作る『MIU404』 テレビドラマの最前線で考えること

ドラマの答えは、いつだって“っぽいこと”を面白く

――この『アンナチュラル』チームならではのやりやすさとか逆にプレッシャーとかそういうのはあったりしたんですか?

塚原:まあ、違う番組なのでね。でも『アンナチュラル』と地続きだって、初めからなんとなく頭にあったんですよね。

――その世界線で繋がってる感じでいくというのは、どなたのアイデアだったんですか?

塚原:たぶん野木さんかな。「同じ警察だから毛利さん(大倉孝二)たち出てもいいよね」とか、「変死体が出ちゃったらUDIに頼むしかない」みたいなこと考えるとちょっとテンション上がるじゃない。そういう日々のちょっとしたウキウキって今の時代すごく大事だから。ウキウキできる座布団をたくさん置いて進んでいきたいとは思うので。でも『アンナチュラル』好きの人に寄せすぎてしまうと、『アンナチュラル』やればいいじゃんってなるから難しいですよね(笑)。でも、綾野さん、星野さんの番組としての展開を大事にしていきたいかな。やっぱり2人と向き合ってるので。

――第3話が高校生たちにフォーカスしていたのもあって、改めて感じたのですが、どこか4機捜のメンバーにも部活感というか青春っぽさがあって、いつも観た後に元気になるんですよね。

塚原:プロの人たちって、楽しく仕事をしているように描くといいんじゃないかなっていう気がしているんです。苦しく働いてる人より、自分の使命を持って生き生きとやってる人が見たいと思うので。そして、実際に機捜の方々に取材でお会いしたときにも、そう感じたんですよね。でも、警察の話って秘匿性が高くて、実際のところを聞いてもほぼ教えてもらえないんですよ。それは治安を守ることに直結しているので正しいと思うんですけど。だからテレビドラマとしては、“っぽいこと”をやるしかないんです。例えば『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で描かれていたキャリア組と所轄の対立って当然あると思っていたんですけど、実際聞いてみるとすごく仲良しで。確かに、未来の上司になるキャリア組に辛く当たらないよなって妙に納得して。でも当時は、アレが楽しかったので良かったんです。“っぽい”ことをかっこよく面白く描く。結局、ドラマはそれを答えにしていくしかないんですよ。

――実は、私の兄も『踊る大捜査線』を観て、警察官になりまして。

塚原:そうやって、たくさんの方が警察組織に入られて、今の日本の治安を維持してくださっていると思うと『踊る大捜査線』はすごいなって思っちゃいますよね。本当に。

――野木さんの脚本は、この状況を踏まえて書き直されたりしているんですか?

塚原:5話までは、もうコロナ禍になる前に出来上がってたのかな。だいぶ前に書いてるんだけど、やっぱり今の世の中に照らし合わせて見ちゃいますよね。この前も星野さんと話したんですが、自粛前にはそんなふうに感じなかったものが、自粛明けに見ると「どうにも苦しいね」ってなる。特に3話の全国大会にいけなくなっちゃった子たちの青春みたいなものが、私の中で大きく現実と重なっちゃって。走りたいだけなのに、走る場所がないとか。みんなで何かしたいっていう思い出づくりができないって、なんて罪なことなんだろうって。もちろん犯罪はダメなんですけれど、ダメなことはダメと伝えながら、もう1回正しく走らせるチャンスを与えよう、という形になったのは、やっぱり自粛中に星野さんと綾野さんと話し合ってたからですね。

――そうですね。積み重ねてきたものを披露する場が理不尽に奪われてしまうっていうのは、腐るのに充分な理由になると思って観ていました。でも、そのときに「障害物の数が人によって違う」というフレーズが心に響いて。

塚原:野木さんの本って、やっぱり世の中を反映しうる深みのある内容だなと改めて思いましたね。きっと個人的で普遍的なところに突っ込んでいくからだと思うんですよね。

――それを映像にしていくというのは、大変な作業ではありませんか?

塚原:本当にそう。“野木さん、またスゴイことを書いて。ヒー! これどうやって撮るの?”みたいなことは毎回です。「書くのは簡単だけど、やるのは大変だ」って言うと、「書くのだって大変だよ!」って怒られそうですけどね。そこに、新井プロデューサーの前髪が目にかかるか、かからないまで見る、細かいこだわりも入ってくるから、もうそれは大変です(笑)。

――そんなふうに言い合って作っていけるのも、またこのチームの強さでもありますね。

塚原:このチームの、いい意味で、ちょっと空回りするぐらいの熱量みたいなものが、しょんぼりしたときに役に立ったらいいなと思います。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/

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