『私の家政夫ナギサさん』を通して見える、“家族にしかできない仕事” 次週は恋の予感も?

 そんなこじれてしまった美登里の心を、やさしく解いてあげたのがナギサさんだった。倒れた娘に何をしてあげればいいかわからない。そんな「お母さんらしくない、できない自分」に耐えられず、その場を放り出そうとした美登里に「ただそばにいてあげること」だと諭すナギサさん。そして、美登里の料理にも付き添い、やさしくフォローをしていくのだった。「何もできなくてもいい」となだめながら。

 たとえ味付けがうまくなくても、その気持ちがおいしいと思える料理がある。ただそばにいてくれるだけで、薬よりも効く看病がある。メイを抱きしめ「ずっとそばにいるから」という美登里。自分の期待に応えてくれるいい子だからではなく、メイがメイであることそのものを愛しいと思っていることが伝わり、メイの心にも温かいものが湧き上がる。そして、その抱擁は、美登里が認められなかった「できない自分」自身を抱きしめているかのようだった。

 ナギサさんがメイと美登里の母娘にしたことを見ると、改めて家事というのはその文字通り“家のこと”なのだと気付かされる。炊事や洗濯といったタスクはほんの表面的なことにすぎず、その根幹にある目的は心地よく過ごせるようにうまく回していくことそのものなのだ。体も心も健康に。そこに住まう人が、自分自身を好きでいられるように向き合うことも、家事なのだ。

 極論、掃除ができなくても、料理が苦手でも、いい家庭は作れる。なぜなら、その作業は得意な誰かに頼むこともできるから。でも、ただそばにいて抱きしめることだったり、その存在そのものを認めてあげることだったり……そうした“家のこと”は最終的に家族の仕事なのかもしれない。家政夫という立場のナギサさんを通じて、家族にしかできない仕事が見えてくる。

 ナギサさんのおかげで、美登里との「しんどい」が少し緩和されたメイ。だが、今度は恋の矢印が入り乱れそうな予感だ。きっと、混乱したメイをまたナギサさんが、上手にケアしていくのではないか。それとも、メイにとって欠かせない存在になりつつあるナギサさんとの関係が複雑化するのだろうか。どうやってナギサさんが家政夫となったのか、どうしてこれほど包容力があるのか、メイが倒れたと聞いたときの的確な指示は過去の職業に関連しているのか……など、まだ知らないナギサさんの素顔も気になるところだ。

■番組概要
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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