『MIU404』に騙され続けている気がしてならない 死を恐れなかった星野源の真意とは?

 そして、現代社会においてもなお「ガール」であるという事実が、その大きな障害になっている。「1億の“女”」の逃走劇を「ミリオンダラー・“ガール”」と題したのは、青池透子も「ガール」の1人にほかならないから。そして「ガール」とは「女の子」であると同時に、守られるべき「弱者」を全般を象徴している言葉にも思えてくる。

 「10億の女神」と讃えられながらも警察から守ってもらえなかった情報提供者・羽野麦(黒川智花)もそう。「通報するな」と社長に言われて自分の正しいと思うことができない青池透子の同僚たちもそう。数の論理で少数派になれば、誰だって、いつだって「ガール」の1人になる可能性がある。

 でも、そんな「ガール」たちに手を差し伸べるためには、心と金銭的な余裕が必要で。強者になるのは、いつも弱者から搾取する人たちばかりで。メディアには「いいことがしたい」という善意が「迷惑だ」と言うセンセーショナルな切り口ばかりで。SNSではノイジーマイノリティーに打ちのめされて……結局、その事件がなくならない。

 「月給14万円で何ができるだろう」「どこならキレイに生きられるのだろう」と絶望する青池透子は、私たちそのものだった。どこか知らない国の「ガール」だけじゃない、厳しい現実はすぐそばにある。それでも、人は生きるしかない。青池透子も走ったのだ。最後に1つくらい、自分が生きた意味を作ろうとして。暴力団を、警察を、そして視聴者を騙しながら19時まで逃げ切って、1億円の眼を持つ兎が「ガール」たちのもとに届くように。

 死の直前に、本当はどう生きたいと願っているのか、その本性が見える。ならば、銃を突きつけられ、全く死を恐れなかった志摩のあの言動は何だったのだろうか。「二度とするな」と怒る伊吹(綾野剛)に、飄々と「合点承知之助」と答える志摩。「合点承知之助」と答えるときには、合点してないときだったはずだ。

 ところで、第3話であれほどサプライズで驚かせてくれた謎の男(菅田将暉)がチラリとも出てこなかった。加えて、これまですぐに事件に食いついていた特派員REC(渡邊圭祐)も姿もなく、代わりに新たな黒幕としてエトリも登場してしまった。その正体も気になるところだ。

 そして、何より第1話から街のビジョンや新聞など、ところどころ出てくる2019年(令和元年)の数字。なぜ、1年前の5月が今描かれているのだろうか。もしかしたら私たちは何か大きな真実を見落としてはいないか。欺れるのではないか。その予感がすごい。もちろん、気持ちよく騙される覚悟はできているつもりだ。この先、盛大に裏切ってくれることを期待してやまない。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

関連記事