『探偵・由利麟太郎』吉川晃司の静かなる佇まい 新川優愛が事件の大きな鍵を握る
そして、瑠璃子の描く絵は身の毛もよだつゾッとするようなグロテスクな描写が多い。真っ赤な重厚なカーテンを閉めた部屋で、こういった絵が並んでいる風景も既視感がある。例に漏れずこの絵に描かれていることが事件を解き明かす方向性を示してくれる点も。そして、あるキャンバスの裏面が膨らんでいるのを見つけた由利がナイフで切り込みを入れると、そこから秘密のノートが出てくるという、そこはやはり昭和時代の原作だけある設定だ。
また、鉄くずが圧縮されたものから血が流れているという、異常性の高い事件シーンが。どうやら例の魁太がリサイクルショップに身を隠していたが、風変わりな方法で自殺を図ったとのこと(いや、風変わりすぎだろ!というツッコミは抑えておこう)。これ見よがしに壁には「GAME OVER」という赤いペンキ文字が。遺書に当たるらしい。魁太のゲーム履歴を見ると、「デビー」というキャラクターとよく交流しており、三津木はこれを「デビル」の略称だと考えるが、由利が「ダークブルー(DB)」の略だと推理。瑠璃子という名前、色味の連想など、名前からの派生、複数の意味合いを込めたネーミングなどはミステリーにはお決まりのお作法である。そしネット上でも少し話題になっていたが、和尚が家族の秘密を打ち明ける流れも定番ではある。
ここまで書けばお察しの良い方は犯人や事件背景までも汲み取ってくれるのではないかと思うが、とにかく業の深さを窺わせるテーマで何とも後味の悪いイヤミス作品でもあった。それぞれの登場人物が様々な事情を抱えており、人間の罪深さや欲深さが今後も明かされていくのだろう。ここに、新たなホラーミステリー作品の誕生だ。きちんとミステリー作品のお決まりをなぞりながらも、それを初主演を務める吉川が静かなる佇まいで見せてくれるので、不思議とわざとらしさはない。また三津木が最後に事件簿を振り返るコメントに少しの希望を見出すことができる。
由利が拠点にしている骨董品店の店主の波田聡美(どんぐり)とのやり取りに一息つきつつ、彼が警視庁を去ることになった「ある事件」についても追っていきたい。
■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji
■放送情報
『探偵・由利麟太郎』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
※5週連続 ※初回15分拡大放送
原作:横溝正史『由利麟太郎シリーズ』(角川文庫刊、柏書房刊)
出演:吉川晃司、志尊淳、木本武宏、どんぐり、田辺誠一
<第1話>「花髑髏」:新川優愛、長田成哉ほか
<第2話>「憑かれた女」:水上京香、赤楚衛二ほか
<第3話>「殺しのピンヒール」:村川絵梨、浅利陽介ほか
<第4話・第5話>「マーダー・バタフライ前編・後編」:高岡早紀、大鶴義丹、鈴木一真、吉谷彩子、佐野岳、板尾創路、水沢林太郎ほか
脚本:小林弘利
演出・プロデュース:木村弥寿彦(カンテレ)
プロデューサー:萩原崇(カンテレ)、森井敦(東映京都撮影所)、福島一貴(東映京都撮影所)
メインテーマ・エンディングテーマ:吉川晃司
メインテーマ:「Brave Arrow」
エンディングテーマ:「焚き火」
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
音楽:ワンミュージック
制作協力:東映京都撮影所
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ