『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズが後世に与えた影響 3部作3週連続放送を機に考える

 1980年代を代表する、アメリカ娯楽映画の本命中の本命として、最も広く愛されていると言っても過言ではないのが、タイムトラベルを題材に、当時最先端の特殊効果と、ポップなテイストによって大勢の観客を惹きつけた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズである。公開から35年ほどのうちに、日本でもTVで何度も放送され親しまれている作品だ。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(c)1985 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

 今年5月には、『アナと雪の女王』のオラフの声を演じた俳優ジョシュ・ギャッドの呼びかけによって、YouTube番組にて当時の製作陣やキャストが集まり、当時の思い出や裏話、主題歌「パワー・オブ・ラブ」の合唱などが披露され、話題を呼んだ。

 この度、『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)において多くのリクエスト数を獲得したことから、6月12日(金)より3部作が3週連続で放送されることになった。このことからも、本シリーズが日本でも長きにわたって愛されている事実が分かる。ここでは、そんな『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ3部作の価値について、タイムトラベルものの面白さを凝縮した作品の魅力や、本シリーズが後世に与えた影響を交えつつ考えていきたい。

 タイムマシンの概念を最初に広く知らしめたのは、サイエンスフィクションの父と呼ばれるH・G・ウェルズの初期作品『タイム・マシン』(1895年)といわれる。その後、ロバート・A・ハインラインやアイザック・アシモフ、フィリップ・K・ディックなど、多くのSF作家の作品のなかで、時間を飛び越えるタイムトラベルの概念は頻繁に題材となっている。もちろん、『タイム・マシン』を含めて、それら小説は度々映画の原作ともなった。リチャード・マシスン原作の『ある日どこかで』(1980年)は、なかでも文学的で心を打つ、ロマンティックな名作である。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』第1作撮影時には、まだ若手監督だったロバート・ゼメキスは、その後のキャリアからも分かる通り、ジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバーグ、後の世代のピーター・ジャクソンやギレルモ・デル・トロ監督などに連なっていくような、ヴィジョンを生み出すクリエイティブな才能を持っている。その才能が、SF好きのボブ・ゲイルとの共同脚本によって、この『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、誰の目にも明らかなほど遺憾なく発揮されたといえよう。

 いまもなお先進的なデザインだと感じられる、イタリア人デザインのアメリカ車、通称“デロリアン”をベースに、原子炉を搭載しプルトニウムを燃料にしてら時間の流れの中を疾走していく、画期的なタイムマシンのヴィジュアルのカッコよさ。そしてマイケル・J・フォックス演じる、小柄な青年マーティ・マクフライと、クリストファー・ロイド演じる、“ドク”と呼ばれるマッドな科学者など、印象的なキャラクターがストーリーにぴったりとはまり、本作は多くの観客を惹きつける作品となった。

 プルトニウムが原因で過激派に追われたマーティは、誤って1955年の世界へと逃げ込み、燃料不足で現代に戻れなくなってしまう。絶望的な状況のなか、過去のドクに会うことでなんとか“未来に戻る”希望を見つけ出したマーティは、自分と同じ年代の両親や、不良のビフらと出会うことで、望まない方向に過去を改変し始めてしまう。若い頃の両親が結婚しなければ、マーティが生まれることもなくなる。劇中では、マーティの体が消えかかることで、“存在の危機”を示しているが、この問題を乗り越えるため、未来からやってきたことを隠しつつ右往左往し事態の収拾をはかる、“SF的ではない”マーティの奮闘ぶりに、多くの観客が共感をおぼえることになった。

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