朝ドラ『エール』保と恵の出会いの物語 キューピッドは幼き久志?

『エール』保と恵の出会いの物語

 『エール』(NHK総合)第12週では、それぞれのアナザーストーリーが繰り広げられている。第58回は、喫茶店バンブーの梶取保(野間口徹)と恵(仲里依紗)の出会いの物語だ。

 時は10年前。保は古本屋で働いていた。外に出ることがなく古本屋で本に触れるだけの生活をしている保を見兼ねて、常連の木下一(井上順)は、外にも出ていくことを提案する。しかし、保はそれを受け入れなかった。

 そこに一人の女性がやってきた。少し派手目でオシャレな佇まいで、古本屋の中で一際輝きを放っている。それが恵であった。

 2人は夏目漱石がお互いに好きであることで意気投合し、話が盛り上がっていく。それからというもの、毎週木曜日に恵は書店を訪れるようになる。2人は仲良くはなっていくものの、それ以上の進展は見られずにいた。


 そこにやってきたのは、なんと幼き頃の佐藤久志(山口太幹)。実は久志は、一の親戚だったのだ。久志は、保に進展しない2人の関係に対しての、数々の大人顔負けの言葉を送る。

 「人は行動することで自分を変えられる。考えているだけでは何も変わらない」とアドバイスされ、意を決した保は、おどおどしながらも、精一杯のお誘いで、「碁でもやりませんか」と恵を誘うことに成功した。

 実はバンブーの名前も、竹取物語に由来するものだった。恵は外国人から求婚されていると久志からの言葉を受け取った保が、恵をかぐや姫と、外国を月と見立てて、「月からかぐや姫を奪い返す」とすぐに行動を起こしたことが功を奏し、2人は結婚することになったのだ。


 これは、関内音(清水香帆)が学芸会で竹取物語でかぐや姫を演じたエピソードの伏線回収にもなっているのであろう。ファンタジックな要素が、作品をより楽しむことができるように、彩りを与えていっている。

 登場人物の過去を知ることは、人や関係をより知ることに繋がり、その後の物語をさらに楽しむことができる。第59回・60回では、双浦環(柴咲コウ)の過去が明らかになる。いかにして彼女は、歌手として活躍していくことになったのか。こちらも注目だ。

■岡田拓朗
関西大学卒。大手・ベンチャーの人材系企業を経てフリーランスとして独立。SNSを中心に映画・ドラマのレビューを執筆。エンタメ系ライターとしても活動中。TwitterInstagram

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
NHK総合にて、2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、野間口徹、仲里依紗、井上順、山崎育三郎、山口太幹ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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