松井玲奈、女優として愛されるワケは? 『エール』から『浦安鉄筋家族』まで“緊張と緩和”の演技

松井玲奈が女優として愛されるワケ

 女優・松井玲奈が、テレビ東京系ドラマBiz『行列の女神~らーめん才遊記~』第3話から登場し、同じくテレビ東京系『浦安鉄筋家族』、NHK連続テレビ小説『エール』と、1クールで3本も並行してドラマを盛り上げている。各々の作品それぞれ演じるキャラクターも作品カラーも全く異なるが、違和感なく溶け込む松井。なぜいま、松井玲奈が女優として愛されているのだろうか。

『行列の女神~らーめん才遊記~』(c)テレビ東京

 『行列の女神~らーめん才遊記~』では、松井は、ラーメン業界をけん引する「清流企画」社長・芹沢達美(鈴木京香)の商売敵である「味惑コーポレーション」の若手フード・コンサルタント難波倫子を演じる。つまり、悪役だ。ドラマのヒロインである清流企画の新人・汐見ゆとり(黒島結菜)と最初に顔を合わせたときの感じの良いメガネ美女が一転、店の端に彼女を連れて行き「消えろ、さっさと消え失せろ言うとんねん、このボケェ」と鬼の形相と関西弁で追い込むギャップーーこれぞ松井の真骨頂である「緊張と緩和」の演技と言える。業界に侵食してくる新進気鋭の会社というイメージが、松井のヒールぶりで体現されているのだ。

ドラマ24『浦安鉄筋家族』(c)浜岡賢次(秋田書店)1993・(c)「浦安鉄筋家族」製作委員会

 『浦安鉄筋家族』では、ファミレス「べーやん」の店長・麻岡ゆみ役。ほうれん草のソテーだけでファミレスの喫煙席に長時間喫煙滞在する大沢木大鉄(佐藤二朗)と喫煙仲間たち、通称「アホヤニーズ」を追い出そうとする小さな攻防を毎回繰り広げる。アホヤニーズが自分たちの娘の話をしていれば、「今頃あんたらのお姫様は誰かと腰振ってるから」と痛烈なツッコミを入れてショックを与えたり、パンパンにたまった灰皿を優しい顔で取り替えようとするが、灰皿チェンジ500円の文字にあわててアホヤニーズが止めるなど、様々な心理戦が笑いを誘う。佐藤二朗たちとの絶妙な間のやり取りが面白いのは、松井の真骨頂である「緊張と緩和」がツッコミとボケとして、シュールな笑いになっているからだろう。

連続テレビ小説『エール』(写真提供=NHK)

 そして『エール』では、ヒロイン・関内音(二階堂ふみ)の姉である関内吟役。気が強い3姉妹で、特に長女の吟と次女の音は明るく、お互いマウントを取り合う仲。第5週からは音とともに東京に引っ越すことになり、音の縁談が破談になりかけたときに、震えが止まらない音を抱きしめたり、仕事や結婚について背中を押すなど、東京では母親代わりとなって音をサポート。姉らしさが色濃くなっていく。朝ドラと言えば、松井は2018年の『まんぷく』にも出演。主人公の福子(安藤サクラ)の親友役として、福子の相談や愚痴を聞く役割を担っており、『エール』での吟と共通している部分とも言える。

 一方で、音の新婚生活で掃除は裕一(窪田正孝)がしてくれるといったノロケ話に、「あんたの掃除が雑だからじゃないの」と突っ込む松井らしいやりとりも。松井のツッコミがあることで、二階堂の明るさがより楽しく映り、シリアスなパートでは視聴者を思わず笑わせるなど、ドラマの良い緩和剤となっている。

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