『野ブタ。』で開花した“絶対的ヒロイン” 堀北真希のキャリアを振り返る

 それは吉田恵輔監督がメガホンを取った『麦子さんと』。母親の遺骨を納めるために、母の故郷である町を訪れた主人公の麦子が、かつて母がアイドル的な人気を集めていたことを知るという物語だ。同作で堀北が演じたのはアニメオタクで自分を捨てた母親に反発する麦子と、若き日の母親のひとり二役。劇中で松田聖子の「赤いスイートピー」を歌うなど、堀北という女優が築き上げてきたアイドル的な魅力をフル稼働させる一方で、これまで演じてきた“少女役”というイメージからの脱却を図るかのように、少女から大人へと成長していくモラトリアムの過程を活き活きと演じる姿からは、今後の女優としての限りない可能性を予感せずにはいられなかったほどだ。

 前述した通り、男女問わず現在の日本の演技界をリードする逸材が勢ぞろいした「88年世代」。堀北の引退によって空いた“女優スリートップ”の一角には、2010年代に入って急激にその演技力に磨きをかけて人気実力ともに確かなものにした吉高由里子が入ったと考えても良いだろう。そしてそこに堀北同様『東京少女』出身である多部未華子が迫るといった感じだ。先日、日本テレビ系のバラエティ番組に、堀北の実妹であるモデルのNANAMIが出演し大きな話題を集めた。そこで堀北が女優として復帰する可能性はないという話が出たが、もし仮に、いずれ彼女が映画やドラマの世界に帰ってくることがあるならば、数年前よりも強力になった「88年世代」を再び牽引する即戦力として輝くに違いない。この“引退期間”は、堀北真希という天性のヒロインの価値を再認識させてくれる絶好の機会だったと言える日が訪れてくれると願いたい。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『野ブタ。をプロデュース』特別編
日本テレビ系にて放送
第2話:4月18日(土)22:00~22:54
出演:亀梨和也、山下智久ほか
脚本:木皿泉
原作:『野ブタ。をプロデュース』白岩玄(河出書房新社)
音楽:池頼広
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:河野英裕、能勢荘志
演出:岩本仁志、北川敬一、佐久間紀佳
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
制作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ

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