『映像研には手を出すな!』明かされる浅草と金森の過去 アニメと人間それぞれの“共存”
第8話「大芝浜祭!」以降、学外での発表を目標にした新作アニメの制作で学校側との軋轢が生じ始めていた映像研。そんな中、浅草が発案したこの「共存」をテーマとした物語は、たとえ価値観や考えが違っていても共生することはできる、という彼女なりのメッセージとして捉えられるし、1つの作品を制作する上で細分化された役割の集大成を「共存」と例え、示唆しているともいえる。
また、前回コラムにて映像研メンバー3人の個性とそれぞれの役割について綴ったが、浅草、金森、水崎という個性の異なる人間が個性ないし能力を引き出し合ってアニメを制作するさまも、一種の「共存」といえるのではないだろうか。
今回の第11話では、回想シーンとして第9話で描かれた幼少時代の金森に続き、浅草と金森の出会いが中学校時代で描かれる。1人では決して感じることの出来なかった他人の価値観を、2人は出会いを通して知ることとなる。今回のテーマである「共存」に深くつながる重要なパートだ。
アニメ制作は、誰か1人が欠けても成立しない。互いの価値観を認め、尊重し、個性を発揮し「共存」して初めて完成する。今回の話は全12話の1クールで完結する、まさに『映像研には手を出すな!』というアニメ作品の終わりが見えてくる内容として相応しいものだったと思う。
第11話の最後を見るに、最終回もひと悶着どころではない騒ぎになりそうだ。果たしてアニメは無事完成するのか、映像研のメンバーは「共存」の大切さを伝えることができるのか? 動くアニメーションとしての『映像研』が終わる寂しさを感じながらも、来週の最終回を心待ちにしたい。
■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。
■放送情報
TVアニメ『映像研には手を出すな!』
NHK総合にて、毎週日曜深夜24:10〜
原作:大童澄瞳(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)
監督:湯浅政明
声の出演:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか
キャラクターデザイン:浅野直之
音楽:オオルタイチ
アニメーション制作:サイエンスSARU
(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
公式サイト:eizouken-anime.com
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