『アライブ』プロデューサーが語る制作の裏側 目指したのは“地に足が着いた医師”の物語

太田大Pが語る、『アライブ』の舞台裏

 いよいよ最終回が近づいている『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)。これまでも多くの医療ドラマが制作されてきた中で、腫瘍内科(メディカル・オンコロジー)というがんに特化した診療科を舞台にしている本作。横浜みなと総合病院に勤務する「オンコロ先生」こと恩田心(松下奈緒)、そのパートナーとなる消化器外科に移籍してきた梶山薫(木村佳乃)と患者とのやりとりを描いていく。

 これまで日本のドラマでは大きく取り上げられることがなかった腫瘍内科だが、本作を通してがん治療の現在について知った視聴者も多いという。腫瘍内科を取り上げようとしたきっかけ、医療業界と提携しての入念なリサーチの裏側、視聴者とのやりとりまで、『モンテ・クリスト伯 ー華麗なる復讐ー』『シャーロック』(いずれもフジテレビ系)などこれまでも多くの話題作を手がけてきた太田大プロデューサーに話を聞いた。

「どれだけお互いのことを愛しているかを描く」

ーー『アライブ』制作のきっかけは?

太田大(以下、太田):第一に、いわゆるスーパードクターのドラマではなくて、どこにでもいそうな医師の活躍を描くドラマを作りたいと思っていました。そんな中、本作が初チーフとなる高野(舞)監督と共に企画を考えていたある日、彼女が、腫瘍内科というアイデアを持ってきました。確かに、どんどん医療が発展している現代においても、2人に1人がかかると言われる“がん”という病の特殊さは、知識の少ない自分でもどこかしら頭にありました。そうした流れから、「がん診療を扱う、地に足が着いたお医者さん」の物語が作りたいなと。自分がもしがんにかかったら、どのようなプロセスで診療されるのかというハウツー的な意味合いと、1人の人間として患者と向き合ってくれる先生に診てもらいたいという自分の気持ちを意識して制作に臨みました。

ーーそんな医療ドラマの骨格が出来上がった中、キャラクターとして女性2人のバディを取り入れた理由は?

太田:「この人なら、自分の全てを捧げてもいい」という思いを相手に抱ける女性2人が、大きな目標に向かって一緒に走っていくドラマを別で作りたいと思っていたタイミングだったので、そのアイデアも取り入れました。ただ、いわゆる「バディもの」とは少し違うと思います。バディと聞いて、馴染み深いイメージは、おそらく、正反対の2人がいがみ合いながらも、補完し合うという関係を想像することが多いかもしれませんが、松下さん演じる心先生と、木村さん演じる薫先生は、別に正反対でもなく、いがみ合うわけでもなく、純粋に尊敬し合う関係です。実際の人生でも、思いや感覚を共有できる人同士がベストなパートナーになる気がします。お互いに敬意を払う2人組の物語を紡いでいけば、結果的に良質な人間ドラマになるのではないかと考えていました。

ーー心先生と薫先生のキャスティングに、松下さんと木村さんを選んだ理由は?

太田:「地に足が着いた医師」という設定を考えると、人の心に寄り添うというのは外せない要素ですから、我が強すぎないことが重要だと思っていました。上品で真面目、コミュニケーション能力が高くて、品行方正ーーと言葉にすると、ドラマのキャラクターとしてはつまらない印象を持つ方もいるかもしれませんが、実際にはそういう人はなかなかいないので、ある意味キャラクターが立っていると言えるのではと思っています。そのようなパブリックイメージに当てはまる方は多くはないで、松下奈緒さんは主人公として説得力を持たせてくれるだろうとお願いさせていただきました。対する薫は、一見我が強そうだけれど、実はすごく柔らかい印象を与えるキャラクターにしたいと思いました。木村佳乃さんは、とてもパワフルでなんでもできる人ですし、知的で品もある。松下さんとの相性という意味でも、どこか共通点を感じさせる2人を掛け合わせたかった。松下さんと木村さんお2人が並んでいる姿が見たかったんです。木村さんは、当初からショートの髪型にされていたんですが、「もっと髪を切っても大丈夫だよ」と仰ってくださったので、お願いしました。そうすることでより、松下さんが女性、薫が男性のラブストーリーのようにも見えながらも、実は薫が女性的な性格で、心がどこか男性的だったりもするという逆転の関係性もできるんじゃないかと考えました。

ーーSNSでもお2人のカップリングを楽しむ人がいます。これは太田さんとしては予想していたことでもあった?

太田:そうですね。多様化が進む現代において、人と人との関係にもいろいろな解釈ができるようになってきていますしね。もともと、どれだけお互いのことを愛しているかを描くことで、必然的にそういう楽しみ方をする方もいらっしゃるのかなとは、なんとなくですが思っていました。

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