『アライブ』プロデューサーが語る制作の裏側 目指したのは“地に足が着いた医師”の物語

太田大Pが語る、『アライブ』の舞台裏

「真摯な伝え方を心がけています」

ーー実際の医療業界からの反響も大きい本作ですが、やはりリサーチと検証は重視していましたか?

太田:医療ドラマはとてもセンシティブな題材を取り扱います。全てにリアリティを求めることは基礎知識としてある中で、今回は腫瘍内科という、まだ一般的なイメージがそこまでない舞台を描くので、全国の腫瘍内科の先生たちからの注目もあるだろうと思っていました。だからこそ、簡単なものにしてはいけないし、複数の取材が絶対必要だと考えました。そこで、フジテレビとしては『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命–』(フジテレビ系)などの作品でもお世話になった、日本医科大学千葉北総病院の松本尚先生にトータルの医療監修に入っていただきながら、複数の腫瘍内科の先生にも協力をお願いしています。第1話で出てくる、腫瘍内科・ガン診療において大切な3つの「あ」ーー「あせらない」「あわてない」「あきらめない」ーーという、心先生が患者さんに伝える大切な信条をくださったのは、腫瘍内科の企画協力という立場で入っていただいている日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之先生です。また、腫瘍内科監修として、がん研究会有明病院の小野麻紀子先生、がん研究センター東病院の松原伸晃先生、順天堂大学の高橋秀和先生など、常に5名以上の先生方のディレクションとサポートの元で作っています。プロットの段階から先生方に教示やヒントをいただき脚本を制作していき、医療用語が出てくるシーンは、医療台本という、より細かく専門用語を入れた別個の台本を作って、現場でも演技指導として先生に立ち会ってもらうなど、リアリティを追求しました。第一線でご活躍されている大変お忙しい先生方の貴重な時間をいただけたのは、ありがたい限りです。

ーー医療業界からのフィードバックで興味深かったものは?

太田:「がん治療をよく取り上げてくれた」と言ってくださる方がとても多いので、『アライブ』を通して、少しでも医療業界で働く方のモチベーションを高められたり、新たな腫瘍内科医の誕生につながれば凄く嬉しいです。

ーー視聴者からのリアクションはいかがでしょう?

太田:SNSでの反応は毎回全てチェックしますし、ホームページに書いてくださるメッセージも全部拝見しています。本作の特徴としては、がんを経験された視聴者の方からの感想が多いことが挙げられます。『アライブ』が、患者さんたちのコミュニティのようになっている。僕らにとっては非常にありがたいことです。ご自身のエピソードを本当に細かく、書いてくださる視聴者の方もいらっしゃいます。実際の反響を見てみると、がんは特別な病気ではないということを知ってほしいと思っていらっしゃる方がすごく多いと感じます。

ーー最後に、視聴者へのメッセージを。

太田:アウトプットは違っても、観てくださる方の糧になるものを制作したいということが、制作者ならば皆持っている願いだと思いますが、『アライブ』はその願いをストレートに出すことがテーマの一つです。がん治療はとても大変です。だけど、その中に希望や生きる喜び、人の優しさといった、生きるために必要なポジティブな感情が毎話に詰め込まれています。それを奇をてらったり、逆説的に伝えることはしないでいながら、もう一方で、希望の押し売りにもならない真摯な伝え方を心がけています。最終話まで観てくださった方々に、あたたかい涙が流れることを願っています。(人から人への)掛け値なしの献身の気持ちに胸を打たれるシーンが必ずあると思います。それぞれのキャラクターが、自分たちが生きてきた道のりを振り返りながら、「人に優しくすること」「自分を大切にすること」が生きていく上で一番必要だということを視聴者の方が再認識してくださるきっかけとなれれば嬉しいです。

※高野舞、高橋秀和の「高」は「はしごだか」が正式表記。

■放送情報
『アライブ がん専門医のカルテ』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演: 松下奈緒、木村佳乃、清原翔、岡崎紗絵、小川紗良、藤井隆、木下ほうか、北大路欣也
脚本:倉光泰子
プロデュース:太田大、有賀聡
演出:高野舞、石井祐介、水田成英、岩城隆一
音楽:眞鍋昭大
(c)フジテレビ

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