『映像研』と『SHIROBAKO』に共通するアニメーションへの賛美 それぞれの視点から紐解く

 NHK総合で現在放送中のテレビアニメ『映像研には手を出すな!』が、SNSを中心に大きな注目を集めている。長編映画『夜は短し歩けよ乙女』(2017年)で、第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した湯浅政明監督が、大童澄瞳の同名漫画を原作にアニメ化したものだ。

 アニメーション制作に情熱を燃やす女子高校生3人が、教師を丸め込んで映像研を立ち上げ、部活と称してアニメ作りに没頭して行く姿を時にコミカルに、時に熱く描き出している。作風は基本的に緩いコメディタッチで進行するが、その根底に流れるのは共同作業でアニメ作りに打ち込む素晴らしさ、仲間との連帯感といった“物作りの苦しさ、楽しさ”である。

 設定画を描いて作品世界を想像(創造)するのが大好きな浅草みどり、美人読者モデルにして好奇心旺盛なアニメーター志望の水崎ツバメ、そして金に細かくて弁が立つマネジメント担当の金森さやかの3人が、それぞれにない部分を互いに補い合いながら、段階的に難易度の高いアニメーション制作に挑んでいく。作中で描かれるアニメ作りの工程の見せ方、効果音の重要さ、果ては時間や予算からくる妥協点といったエピソードの数々が、アニメファンのみならず広い視聴者に受け入れられて、ネットを中心に盛り上がりを見せている。

 アニメーション制作は共同作業なので、複数の人間が同じモチベーションを持って動かなければ、アニメは完成に至らない。そんなことが、高校の部活という親近感のある題材を通して視聴者に伝えられる、なんとも魅力的な作品なのだ。だが、こういったアニメ作りの現場にスポットを当てたテレビアニメは本作が初めてというわけではない。アニメ制作会社を舞台にした『SHIROBAKO』(2014年)も、同様に“物作りの苦しさ、楽しさ”を描いた作品だった。

 『SHIROBAKO』は、武蔵野アニメーション(通称ムサニ、以下同)というアニメ制作会社に就職した宮森あおいと、彼女の高校時代の同級生たちが、それぞれアニメ業界で脚本家やCG制作など自分の夢を達成させようと奮闘する姿を描く群像劇。高校生が主人公の『映像研』が、割と初歩的なアニメ作りで苦心する話であるのに対し、『SHIROBAKO』はテレビ放送される商業アニメの話なので、アニメ制作会社と原作サイドの軋轢や、アニメーターの挫折感、アニメ業界内の人間関係などは現実的で、よりシビアに描写される。

 宮森の同級生で新人声優の坂木しずかは、オーディションに何度も落選し、声優の仕事だけでは食べて行けないために居酒屋でバイトをしているのだ。アニメを作るのは楽しいし素晴らしい。でも楽しいばかりの現場ではないという社会人の苦しさとつらさも、時には正面から描いている。そんなテレビシリーズの後日譚を描いた『劇場版 SHIROBAKO』が現在公開中だ。テレビ版の話から4年後という設定で、宮森を取り巻く環境は色々と変化している。

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