『スカーレット』戸田恵梨香の“後悔”の表情が胸を刺す 失ってから初めて気づく大切なもの
『スカーレット』(NHK総合)第18週「炎を信じて」では、昭和53年、喜美子(戸田恵梨香)の息子・武志(伊藤健太郎)は高校2年生となり、進路に悩んでいた。
国立大学も狙える成績の武志は、陶芸家の道に進むかで揺れていた。陶芸家としてやりたいことをやって成功した代わりに、八郎(松下洸平)という大事な人を離婚という形で失った喜美子を近くで見ていたからだ。
昭和53年へと時が7年経過するのは、第18週の真ん中、第105回。それからは、まるで武志がもう一人の主人公のように物語が進んでいく。そこにあるのは高校生としての青春。ただ、離れて暮らす父・十代田八郎が、武志にとっては変わらない特別な存在で、もう一人の心の支えでもあった。
昭和54年3月、死に物狂いで勉強していた武志は、念願の志望校である京都の美術大学に合格。4月から京都の学生寮で暮らすことになる。母屋で2人の喜美子と武志。『スカーレット』には、喜美子と八郎による「今やから言うけど大会」が息づいている。悩みや怒りも時間が経てば解決してくれるという考え方。7年の月日の中で、喜美子が女性陶芸家として名声を得ていったことは、「めでたし めでたし」という昔話形式で語られるが、武志の大学受験の陰に八郎の存在があったことも、喜美子へと“今やから言うけど”と言わんばかりに伝えられる。
父と同じ京都の美術大学を受験することから、八郎の存在に勘付いていた喜美子だったが、“信楽のブルースリー”こと信作(林遣都)を通じて、武志が父からのずっと手紙を貰っていたこと、5年ぶりに名古屋で会っていたことは初めて知る事実だった。「風呂沸かせるほどのぎょうさんの手紙」には、必ず最後に同じ文面が添えてあった。「会いたい。いつか会いたい」。離れていても、苗字が変わっても父と子の関係はずっと続く。八郎は以前、父という立場に、「頑張らな続かないような関係になったらあかん」と話していたが、まさに八郎の接し方は自然体の優しい父。顔を見た途端に「おう!」「おう!」「たぬきそば!」と昔と変わらない雰囲気に戻ったという、八郎と武志の姿が容易に目に浮かぶ。