『アライブ』次回は“最初の山場”に? 松下奈緒×木村佳乃が噛みしめた、家族との時間の大切さ

 匠(中村俊介)の容態が急変したとの連絡を受けて病院に駆けつけた心(松下奈緒)。心の幻の中では意識を取り戻した匠だったが、現実では危険な状態にあると担当医の須藤(田辺誠一)から告げられる。それを受けて匠の父・京太郎(北大路欣也)は「最後ぐらい好きな場所で」と、自宅で匠を看取ることはできないかと提案する。23日に放送されたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』第3話は、愛する者との別れをどのように迎えるかということをテーマに、医者という立場で人の死に向き合う“オンコロ先生”としての姿と、夫の死に直面した恩田心という1人の人間としての姿が如実に重なり合うエピソードとなったといえよう。

 横浜みなと総合病院に高カルシウム血症を起こして搬送されてきた末期の肺がん患者・木内陽子(朝加真由美)。転移も見られ、著しく体力も低下していることから心がいる腫瘍内科では彼女の抗がん剤治療を続けるべきか、中止して緩和ケアにするべきかで真っ向から意見が分かれることに。そして、初めは家族に気を遣い、ホスピスで緩和ケアを受けると言っていた木内だったが、夫と話し合って在宅で緩和ケアを行うことに決める。しかし、家事すらまともにできない木内の夫に、2人の娘は猛反発してしまうのだ。

 今回のエピソードの大きな主題としてあるのは「緩和医療」であろう。序盤に阿久津(木下ほうか)が語るように、近年では早期から緩和ケアを取り入れることがわずかながら増えつつある。元々の緩和ケアは「治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対するもの」とされてきたが、その後「少しでも苦痛を和らげることで患者本人とその家族のQOL(=クオリティ・オブ・ライフ)を向上させ、残された時間をより良い形で過ごす」という意味合いへと変化していった。さらに数年前には早期から緩和ケアを行うことで生存期間が延長する可能性があるという論文も発表されているのである。

 早期からの緩和ケアで生存期間が延びることへの明確な根拠はないものの、患者自身が予後や治療について理解を深めることができ、患者自身やその家族への精神的な負担が少ないことなどが理由として考えられるようだ。もっとも、その序盤の阿久津の言葉のすぐ直後には「がん患者の人数に対して緩和ケア医が少なすぎる」ために、まだ早期の緩和ケアが主流にはなりきれていないことも指摘されている。緩和ケア=死の宣告というイメージもまだ強くある状態に加え、いまや年間で新たにがんと診断される患者の数が100万人にのぼる時代。そうした中だからこそ、あまりスポットの当たらない医療現場の現状を描く本作の意義は高まることだろう。

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