『アライブ』『トップナイフ』『病室で念仏を唱えないでください』など、各局医療ドラマの狙いは?

 1月のドラマが続々と始まっている。なんといっても今期最大の特色は、6本にも及ぶ医療ドラマの乱立である。高視聴率が見込める医療ドラマを、テレビ朝日を除く各局それぞれが打ち出すことになった。テレビ視聴形態も多様性を増す昨今であると言うのに、視聴率に左右されざるを得ないテレビドラマ業界を批判的に見る声も一理あるが、それぞれ力を入れた医療ドラマの個性の違いを見るのも面白い。未放送分の期待含め、特色を分析していきたい。

『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)

『アライブ がん専門医のカルテ』(c)フジテレビ

 本日第2話が放送される『アライブ』。2人に1人が生涯のうちにかかるといわれているがんは、誰にとっても他人事ではない。いつ自分自身、あるいは家族の身に降りかかってもおかしくない問題とどう向き合うか。腫瘍内科というがんに特化した診療科を舞台に、患者本人や家族の葛藤を描く。シビアな展開の先に見える一筋の光を見つめるためのドラマだ。

 しかしその一方で、最強の女医コンビ結成のはずの松下奈緒と木村佳乃の組み合わせが、1話終盤、『僕のヤバイ妻』(カンテレ・フジテレビ系)を髣髴とさせるほどの木村の暗躍ぶりで揺らぎ、一気にサスペンス色が強まった。個性的なドラマが続く木曜劇場枠、展開が読めない。

『トップナイフ ―天才脳外科医の条件―』(日本テレビ系)

『トップナイフ ー天才脳外科医の条件ー』(c)日本テレビ

 脳神経外科を舞台に、『コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命-』『BOSS』(フジテレビ系)の脚本家・林宏司、『女王の教室』(日本テレビ系)の演出・大塚恭司という布陣で、天海祐希を主演に迎えた『トップナイフ』。1人のカリスマ女医を中心に物語が展開していくとなると、米倉涼子の『ドクターX』シリーズ(テレビ朝日系)のように、男性中心社会のしがらみと戦う圧倒的に強い女性を描くドラマかと思いきや、一味違う。

 椎名桔平、永山絢斗演じる個性派天才脳外科医たちに、キュートなコメディエンヌ・広瀬アリス演じる新人研修医と、実に魅力的な登場人物たち。互いに認め合い、切磋琢磨しあうチームとしての雰囲気の良さが1話目から伝わってくるのは、『BOSS』や『緊急取調室』(テレビ朝日系)等、天海祐希座長ドラマの醍醐味と言える。また、『女王の教室』のエンディングを思い出す、天海が華麗に踊るエンディングをはじめ、林と大塚というタッグだからこそできる新たな天海祐希の魅力を存分に堪能したい。

『心の傷を癒すということ』(NHK総合)

 柄本佑、尾野真千子、濱田岳というキャスト陣だけで傑作の予感がする、心のケアに視点を置いた医療ドラマ。阪神・淡路大震災当時、被災者のPTSDと向き合い続けた精神科医・安克昌を描く。ドラマやドキュメンタリーで震災を描き続けてきたNHKならではの真摯で丁寧なドラマになるのではないかと期待している。

『病院の治しかた~ドクター有原の挑戦~』(テレビ東京系)

 ビジネスものを通して現代社会を描くドラマBiz枠が送るのは、小泉孝太郎を主演に、病院の経営再建を描く、異色の医療ドラマだ。スピードスケート選手・小平奈緒を支えた相澤病院の実話を基に、『コウノドリ』(TBS系)の山本むつみが脚本を手がけることで、単に経営ものだけではない人情味のある良作が生まれるのではないか。

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