安田顕、お仕事ドラマからホームドラマまで欠かせない役者に 大活躍の2019年を振り返る

 2019年は、4月から9月まで、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)に出演。ヒロインの幼馴染、雪次郎(山田裕貴)の父親で“帯広のお菓子発明王”小畑雪之助を演じ、ドラマの中でも、そして俳優としても後輩たちを引っ張ってきた安田顕。この1年を振り返っても、さまざまな役を演じてきた。

 3月、北海道テレビ放送(HTB)が協力をして描かれた漫画を原作に、実際にHTBで作られた『チャンネルはそのまま!』は、ローカル局のドラマながら、さまざまな形で全国でも放送、配信され、2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門グランプリを受賞した。

 このドラマの中で安田は、ヒロインが働くHHTVのライバル局である「ひぐまテレビ」の情報部部長役を演じている。この「ひくまテレビ」のロゴには、鮭に爪を立てるちょっと怖めのひぐまが採用されていておっかないイメージなのだが、局員もいきなり「日曜劇場」の悪者企業の面々のようで、のほほんとした「HHTV」とは対照的に描かている。少々誇張されたライバル局なのも面白い。

HTB開局50周年ドラマ『チャンネルはそのまま!』(c)HTB 北海道テレビ放送株式会社

 安田も、不敵な笑みを浮かべたと思えば、今度は憎々しい表情を見せるなど、“濃い目”の演技を見せている。この作品は、TEAM NACSなしでは成り立たないドラマながら、大泉洋らのメンバーが普段はできないような役を嬉々として演じているのもファンとしては楽しい作品だった。

 WOWOWで放送された『連続ドラマW 絶叫』は、尾野真千子演じる主人公・陽子が保険金殺人を企て、その足跡を女性刑事が追っていくストーリー。安田顕は、ホームレスを「忌民」と呼び、彼らを救うふりをしながら、受給される保険金を奪うビジネスをしている神代を演じている。

 神代は主人公の陽子と出会い、共に保険金殺人を企てる。関西弁で人懐っこそうな笑顔も見せるのに、どこかその根っこには恐ろしい部分があるのではないかと思わせる複雑な役にであった。しかし、ある事で、陽子と対峙するときの、神代の表情を見ると、人懐っこく見えて、その実、冷酷で、でもそのもっと奥にはまた違う感情を持っていたのではないかと考えさせられ、その表情にぐっと感情を持って行かれてしまった。

 今年の安田は、神代がそうであるように、演技ひとつで見るものの解釈をどこかに引っ張っていくほどのものがあったように思う。

 11月に放送された愛知発地域ドラマ『黄色い煉瓦~フランク・ロイド・ライトを騙した男~』(NHK総合)では、1923年に世界的建築家であったフランク・ロイド・ライトに依頼され、黄色い煉瓦を焼くことを請け負った愛知県常滑市の煉瓦職人である久田吉之助を演じた。

 この久田という男がフランク・ロイド・ライトに初めて会うシーンでも、目が血走り、殺気が感じられたが、悪人というわけではなく、己の生きた証を煉瓦に込め表現しているような人物であった。久田は黄色い煉瓦の材料である土を探しにいった先で、その土を口の中にいれてその感触を確かめる。実際にも、安田は土を食べたそうで、終始、久田の執念を感じさせる演技に圧倒される一作であった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる