テーマは前作よりも現代的に 『ジュマンジ/ネクスト・レベル』が示す、“人間性”の重要度
われわれの生きる現実世界では、いまや、オンラインで世界中のプレイヤーたちが、自分の好きなキャラクターの姿になって、TVゲームの世界で対戦したり、一緒に冒険をすることができるようになっている。テキストを打って言語で意思疎通する場合を除けば、そこでは、人種や性別、年齢の違いなどは、ほとんど意味がなくなる。重要なのは、ゲームの中でどう振る舞うか、である。あらゆる先入観から解放され、行動だけでその人が判断される。これは、ある意味“ユートピア”ではないのか。
ゲーム以外でも、「バーチャルYouTuber(Vチューバー)」に代表されるように、技術革新によって、例えば中年男性が若い女子のキャラクターになりきって動画を配信することも可能になってきている。そこでは、“男らしさ”、“女らしさ”、“若者らしさ”などの社会常識や、民族性、肉体の制約にとらわれることもない。映画では、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)、『アバター』(2009年)などでも描かれてきたことだ。
イギリスのSFドラマ『ブラックミラー』シーズン5のエピソード『ストライキング・ヴァイパーズ』は、このような状況をかなり面白く描いている。学生時代からの男同士の親友が、オンラインのバーチャル格闘ゲームで、男女のキャラクターになりきって対戦するうちに、互いに恋愛感情が芽生えてしまうのである。現実世界で会っているときには性的興奮を相手に覚えないが、なぜかゲームの中では、お互いに求め合ってしまう。これは従来のゲイとも異なる、複雑な性的指向だ。肉体からの解放は、このような人類が初めて出会う、未知の可能性を含んでいる。本作でも、ある登場人物が驚くような選択をすることになるが、それもまた、すべての制約から解き放たれた、新時代の価値を示すものとなっている。
だが重要なのは、キャラクターを変更したところで、その人の内面自体が全く変わるわけではない、ということだろう。本作でも、“キャラクターたちの中身が入れ替わる”ということでのドタバタ描写がある。しかし結局、その人は“その人”なのだ。入れ替わった役を演じている出演者たちが表現しているのは、そういうメッセージである。オンラインゲームそのもののような世界を体現する本作『ジュマンジ/ネクスト・レベル』が示すのは、新しい技術の到来によって重要視されるのは、むしろ“人間性”ということなのだ。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『ジュマンジ/ネクスト・レベル』
全国公開中
監督:ジェイク・カスダン
出演:ドウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラック、ケヴィン・ハート、カレン・ギラン、ニック・ジョナス 、ダニー・デヴィート、ダニー・グローヴァー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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