多様化する“続編もの”ドラマ 成功の鍵は「変わったこと・変わらないこと」の見極めにあり

多様化する、国内ドラマ「続編」の形

 そんな中、絶妙なタイミングで二度に渡って映画化し、きれいに終われたのが、宮藤官九郎脚本の『木更津キャッツアイ』(TBS系)だろう。本作は主人公のぶっさん(岡田准一)が癌で余命半年という状況から始まるのだが、完結編の映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』は、ぶっさんが死んだ二年後という舞台設定で、ゾンビとして登場する(昔のままの)ぶっさんに、大人になりつつある仲間たちが別れを告げることがテーマだった。これはドラマ終了から4年後という、あのタイミングでないと描けなかったテーマである。

 2017年に7年ぶりに続編が作られた医療ドラマ『コード・ブルー』(フジテレビ系)もそうだが、生身の俳優を起用した作品は続編を作るタイミングが難しい。しかし、だからこそうまくハマると、青春の一場面を刻印した「思い出のアルバム」のような美しい効果を生み出すことができる。

 一方、『相棒』、『ドクターX』、『孤独のグルメ』といった作品は、劇中で流れている時間は現代と同じだが、主人公は年齢不詳で時間が止まっているようにみえる。こちらはアニメでいうと『サザエさん』(フジテレビ系)に近い作りで、劇中の時間は確実に流れているのだが、登場人物は同じ姿のままだ。主人公が大人だから細かい変化を描いていないだけとも言えるが、例えば『相棒』の場合は、周囲の人間関係は変化していくのに、主人公の杉下右京(水谷豊)は年齢不詳で家族関係も謎なので、年々、漫画やアニメのキャラクターに近い存在になってきている。

 最後に、近年増えているのが、主人公の過去を描いた前日譚。最近では『男はつらいよ』シリーズの主人公・車寅次郎(渥美清)の少年期を描いた『少年寅次郎』(NHK総合)が印象的だったが、前日譚の場合は、人気作のその後を描く続編モノとは真逆の、過去を掘っていくアプリーチとなるのだが「変わったことと、変わらないこと」を描くという意味では同じことだ。『少年寅次郎』は、その按配が絶妙で「あの子どもが寅さんになる」という説得力があったことが一番の成功要因である。

「変わったことと、変わらないこと」、その見極めが大事なのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15~24:05放送
出演:田中圭、千葉雄大、戸次重幸、佐津川愛美、木崎ゆりあ、鈴鹿央士、片岡京子、MEGUMI、正名僕蔵、吉田鋼太郎
エグゼクティブプロデューサー:桑田潔(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、Yuki Saito、山本大輔
音楽:河野伸
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove-inthesky/

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