『G線上のあなたと私』波瑠は“私たち”の代弁者 安達奈緒子が突きつける、恋愛と人間愛の困難さ
9話で也映子は「私たち」と総称して幸恵の思いを汲み、マイナスにもプラスにも向かう女子力について語る。「私たちってそういうとこあるの、ごめんね。誰でも自分でもどうしようもないものと戦っている。胸に秘めている思いがあるんだよ」。それは、一見順風満帆そうに見えても実はいろいろな悩みを抱えている登場人物全員のことであると共に、このドラマを見ている「私たち」、女性の思いを代弁しているかのように見えた。
これは「私たち」の物語だ。私たちはいつも揺らがずにはいられない。人間愛を突き詰めれば恋愛に突き当たるし、恋愛を突き詰めれば人間愛に突き当たる。なぜなら「Someone to watch over me(私を見ていてくれる人)」の存在に気づいて初めて人は人を好きになってしまうのだから。今度は逆に、相手のことを一心に思わずにいられないのだ。相手のことを思えば思うほど、自分と相手の人生を一緒に考えるほど、その困難さに突き当たる。だから「好きの向こう側」はしんどい。「しんどいけど、自分を動かせるのは自分しかいない。人間、やっぱり止まってたらダメなんですよ」(2話)と也映子自身がかつて理人に言ったように、立ち止まろうとする也映子の背中を押すのは彼女自身しかいないのである。
■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。
■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/