前作の魅力は確かに「継承」! ロック様たちの“憑依芸”光る『ジュマンジ/ネクスト・レベル』
冴えない大学生のスペンサー(アレックス・ウルフ)。大学へ進学したけれど、学校では友達ができず、バイト先では叱られる。なんだか暗い毎日だ。インスタを見ると高校時代の親友たちは自分と違って部活で活躍したり、海外旅行を楽しんだり、イイ感じに人生をエンジョイしてる。遠距離恋愛になった彼女も人間関係に恵まれたようで、目新しいピアスを入れていた。みんな充実してる。充実してないのは僕だけ。久しぶりの帰省でみんなと会うことになったけれど、正直億劫に思えてならない。おまけに家ではおじいちゃんが何やら文句を言っている。「僕の居場所はどこにあるんだろう?」一晩悩んだスペンサーは、最悪の決断を下してしまう。「そうだ、僕の居場所は――」翌日、スペンサーの不在に気づいた友人たちは、彼の家を訪ねる。そこには半壊状態で起動しているあのゲーム“ジュマンジ”があった……。
まさかの続編である。そもそも本作『ジュマンジ/ネクスト・レベル』(2019年)の1つ前、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(2017年)も“まさか”の続編だった。もともと『ジュマンジ』は絵本が原作で、それを基に映画『ジュマンジ』(1995年)が作られたのだが……何しろ20年も間隔がある。普通ならこんなに時間をおかないし、おまけに主演はロック様で、オリジナルのロビン・ウィリアムズとは全く違う。どうなるのかと思ったら、蓋を開けてみれば予想以上の大ヒット。数々のユーモアとド派手なアクション。そして高校青春映画の古典『ブレックファスト・クラブ』(1985年)を下敷きに、スクールカーストの中で生きていた高校生たちが、ゲームの世界で現実と全く異なる役割を与えられることで、互いに理解と友情を深め合う爽やかな青春娯楽活劇に仕上がっていた。正直、何をどうやってもコレ以上は蛇足……と思うほど完璧なオリジナルのアップグレード版だったと思う。
なので、今回も若干の無理やり感はぬぐえない。今回は主人公の祖父(ダニー・デヴィート)と祖父の友人(ダニー・グローヴァー)もゲームの世界に入るのだが、2人の演技を完璧にトレースしたロック様やケヴィン・ハートの芸達者ぶりは楽しめるものの、この部分が本筋にうまく絡めることができていなかったように思う。特にスペンサーと老人組の絡みはもっと見たかった。また、前作であんなに愛おしかったスペンサーに、「君は何をやっておるんだね」とダメ出しをしたくなる気持ちを抱いてしまったのも残念だ。こじらせているキャラクターとはいえ、彼の行動が身勝手に見えるし、もっと明確な劇中での“償い”を求めてしまった。ただ幸か不幸か、演じるアレックス・ウルフが『ヘレディタリー/継承』(2018年)で“やらかす人”を鮮烈に演じたせいか、「まぁ、アレックス・ウルフだから仕方ないよな」という気持ちもあり、ギリ許せたが(というか心なしかシチュエーションなども含めて『ヘレディタリー/継承』に寄せていませんでしたか?)。