『グランメゾン東京』よくある物語なのになぜこんなに面白い? “中年パーティーの冒険”に惹かれる理由
元気いっぱいで破天荒な主人公が、画面から飛び出しそうな勢いで暴れまわる。彼に出会ったものたちはその魅力にひかれて仲間となり、それぞれの個性をいかして問題を解決していき、最後には力を合わせて巨大な敵や困難に立ち向かい、打ち破る。
古今東西よく見る形の物語。私たちのDNAには、こういうお話を好きになる何かが刷り込まれているんじゃないでしょうか。古くは西遊記、桃太郎、新しいものならドラゴンクエストなどなど。そして『グランメゾン東京』(TBS系)も、そんな物語だと思います。
天才的なシェフでありながらトラブルメーカーでもある尾花夏樹(木村拓哉)はフレンチの世界で暴れまわる孫悟空であり、彼を戒め助ける知性と常識の持ち主・三蔵法師が早見倫子(鈴木京香)、彼らについて行くメンバー、京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)が沙悟浄と猪八戒ということになるでしょうか。
彼らは(もちろん)天竺へ旅をするのではなく、ミシュランの三つ星をとるために、個性を発揮して力を合わせ、料理を作り続ける。
そしてそんな彼らの前に立ちはだかるのは鬼ヶ島の鬼……ではなく、人気レストランgakuのオーナー、江藤(手塚とおる)。スパイを送り込んだり、金をつかって妨害するなど、なんともわかりやすい悪役ですね。そして主人公と正反対なタイプのライバル、丹後学(尾上菊之助)も、こういう物語には欠かせない。グランメゾン東京のユニフォームが白なのに対し、gakuは黒。ここにも、善悪はこうなってますよ、というわかりやすいメッセージが。
さすがにここまで「よくある典型的な物語構造」「わかりやすい敵」「わかりやすい目的地」だと、飽きてしまいそうなものなのですが、このドラマは全然飽きずに、毎週わくわくして見ることができます。その理由はいくつかあるのですが……たとえば、鮮やかに映像化される料理風景。知らない高級食材ばかりで、どんな味かわからないけどきっとおいしいに違いないと信じられる、芸術品のような料理の数々。それらが次々出てくる画面がとにかく美しい。それから、平古祥平(玉森裕太)という若いシェフがいることも、物語の不確定要素としておもしろい。今のところ、善悪の象徴である白と黒のユニフォームをどちらも着たのは彼だけなのですから。最後に彼はどちらの色を選ぶのでしょう。
そしてもうひとつ、このドラマが「よくある話だけど、よくある話ではない」理由として、主人公たちのパーティーが、ほぼ全員中年なことが大きいと思います。尾花と倫子さんはなにかあると「おじさん」「おばさん」とののしり合っているけれど、年齢的には確かにそうなりますよね。