【ネタバレあり】賛否渦巻く『ターミネーター:ニュー・フェイト』の革新的な試みを解説

 いまも愛される、SFアクション映画の代表格、『ターミネーター』(1984年)と、『ターミネーター2』(1991年)。観客からの圧倒的な支持とヒットを受け、この後にもシリーズ作品がいくつも製作されたが、やはり最初の2作は別格である。これらを創造したジェームズ・キャメロンは、ここからシリーズを離脱し、重要な役を演じたリンダ・ハミルトンもまた、脚本の内容を理由に遠ざかってしまう。

 そんな2作の“正統続編”という位置付けで製作された本作『ターミネーター:ニュー・フェイト』は、この二人に加え、「これが最後のシリーズ出演」と宣言したアーノルド・シュワルツェネッガーも参加し、久しぶりに“レジェンド”が揃った作品となった。さらに監督を、『デッドプール』(2016年)を大ヒットさせたティム・ミラー、ストーリーをジェームズ・キャメロン、脚本を『ダークナイト』(2008年)のデヴィッド・S・ゴイヤーらが務めることになった。

 この座組みにはファンも納得できるのでは……と思えた本作だが、内容についてはリンダ・ハミルトンやマッケンジー・デイヴィスなど、みごとなアクションを演じた俳優陣の勇姿に絶賛の声があがりながらも、同時に否定的な意見も噴出しているようである。ここでは、そのような見方が出てしまった理由を追いながら、この作品がやろうとした、革新的な試みについても明らかにしていきたい。

 『ターミネーター』シリーズ最初の2作までに描かれたのは、自我に目覚めたAIコンピューター“スカイネット”によって、機械に人間が支配されてしまう絶望的な未来の暗示、そして、そんな未来の唯一の希望だとされる抵抗軍のリーダーとなる英雄ジョン・コナーの存在だった。そして、彼を産むはずの、未来の母親であるサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を殺害するために未来から派遣された、機械側の殺人兵器“ターミネーター”、“T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)”との戦い……また、生まれてきたジョンを、強敵“T-1000”から守るため、かつてサラを襲ったT-800と同型のターミネーターが共闘するというアツい展開によって、未来に希望がつながれるまでが、公開当時の最新鋭の技術で表現されていた。

 “正統”を謳う第3作である本作は、なんと『ターミネーター2』であれほど苦労して救ったはずのジョン・コナー少年が、新たに派遣されたT-800によって、あっさりと殺害されてしまうという衝撃的な展開によってスタートする。これによって、未来は暗黒に閉ざされたかに見えた……。だが、じつはそうでもなかったことが、未来からやってきた新キャラクター、強化型兵士グレース(マッケンジー・デイヴィス)が、劇中で伝えてくれる。

 彼女とサラ・コナーとの会話によると、ジョン・コナーはたしかに死んでしまったが、『ターミネーター2』での奮闘は決して無駄ではなく、それによってスカイネットの台頭を阻止できていたというのだ。しかし同時に、そのことでスカイネットとは異なるAIが人類を攻撃するという、新たな暗い未来を生み出してもいたらしい。さらに、それによって新たな未来の希望となる人間も、ジョンから別人へと変化した。それが、メキシコシティの自動車工場で働く女性ダニー(ナタリア・レイエス)である。

 機械側は、標的ダニーを殺害するため、超強力なターミネーター“REV-9(ガブリエル・ルナ)”を未来から送りこむ。対して、人間側もグレースを未来から派遣し、ダニー救出をはかろうとする。ダニーを守るため、グレースの戦いにサラ・コナー、そして人間に接することによって考えが変わったというT-800も参戦し、2体分離などの新たな機能を持ったREV-9の容赦ない追撃をかわしながら、最終決戦の用意を進めていく。

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