広瀬すず×志尊淳が魅せる、若さに満ちた輝き 舞台『Q』が提示する源平の世の「ロミジュリ」

 若い2人が一目会ったその時から始まった、たった5日間=432000秒の恋を悲恋で終わらせまいと運命の先回りをしようとする「それからの愁里愛」を松たか子、「それからの瑯壬生」を上川隆也がそれぞれ演じている。上川、広瀬、志尊ら今回NODA・MAPへは初参加の出演者が多い中、5回目の出演となる松は野田の描く世界の中心で、物語の進行役ともいうべき役割を担っている。役名にある「それからの」が示す時間の経過を内包した深みのある演技で、源平の時代から現代まで連綿と続く歴史と、同じことを何度でも繰り返す人間の愚かさを訴えかけてくる。

 上川も、テレビドラマで数々の主演をこなすなどすっかり映像のイメージが定着しているが、やはり舞台でそのキャリアをスタートさせており、ほぼ年に1回程度のペースでコンスタントに舞台出演をしている実力を、この作品でも存分に発揮している。豊かな表情と雄弁な肉体が、コミカルさを交えながら愛嬌のある瑯壬生像を作り上げている分、後半の瑯壬生を襲う怒涛の展開に観客は心を強くつかまれるだろう。

 広瀬×志尊、松×上川という2組の「ロミジュリ」は、時空を超えて交錯する。過去の若き自分たちを見守るそれからのロミジュリたちという構造が、物語の途中ではいつの間にか未来の自分たちを見つめる若いロミジュリという構造へ変化していたりと、軽やかに時空を超える巧みな演出は、演劇が持つ表現の可能性を知らしめる。過去と現在と未来は連続して深く関わり合っていて分断することはできない、という示唆にも感じられる。

 先に述べた4名以外のキャストもそれぞれに個性を発揮し、見ごたえのある演技バトルを楽しむことができる。特に、竹中直人が醸し出す怪しく不穏なキャラクターの存在感がこの舞台のコミカルとシリアスの絶妙なバランス感覚の鍵となっていると感じた。彼に施されたメイクからはある特定のキャラクターが想起されるため、そこの意味するところが何であるのか、色々と解釈をすることができる面白さもある。

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