『これは経費で落ちません!』に見る、マイナー部署モノの面白さ 非正規雇用の存在も重要な軸に

 このように『これ経』では会社の仕事が細く描かれているのだが、実は00年代以降の会社モノにおいてもっとも重要なのは、非正規雇用の存在ではないかと思う。

 『これ経』では、第2話に登場した公報課の室田千晶(真魚)が契約社員で、査定を気にしている姿が描かれている。公報・宣伝部門もまた『空飛ぶ広報室』(TBS系)を筆頭に注目が集まっている部署だが、こういった正社員と非正規の格差がさらっと描かれているのは、本作の見逃せないところである。

 総務省の労働力調査によると2017年の被雇用者に占める非正規の社員・従業員の割合は37.3%だという。背景にあるのは人件費削減による経営の合理化だ。

 これだけ人数が多いのだから『ハケンの品格』(日本テレビ系)のようなファンタジーではなく、リアルな非正規社員が活躍するドラマを作れば、お仕事モノの新境地となるのではないかと期待しているのだが、なかなかそういう作品が出てこないのは、万人が共有するイメージを打ち出すのが難しいからかもしれない。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ10『これは経費で落ちません!』
NHK総合にて、毎週(金)22:00〜22:49放送(連続10回)
出演:多部未華子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、伊藤沙莉、桐山漣、松井愛莉、韓英恵
角田晃広、片瀬那奈、モロ師岡、平山浩行、吹越満ほか
原作:青木祐子
脚本:渡辺千穂、藤平久子、蛭田直美
音楽:安田寿之
主題歌:阿部真央
制作統括:管原浩(NHK)、坂下哲也(AX-ON)
演出:中島悟、松永洋一
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/drama10/keihi/

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