上野樹里と時任三郎、互いを思い見せなかった涙 『監察医 朝顔』が描く震災後を生きるということ

 平に告げられた鑑定結果は「親子関係否定」。つまり、骨は里子のものではなかったのだ。印象的なのは、平が浩之に結果を伝える場面。内川橋にいる浩之のもとに着く平。そこに会話はなく、平の表情で浩之はその結果を汲み取る。川の対岸は、復興の工事が着々と進んでいた。いずれ、ここにも工事の時は訪れる。浩之の口から溢れた言葉は、「諦めてた。とっくの昔に。でもやっぱり会いたい。里子に」というもの。「いいかげん受け入れろ」と平を諭していた浩之の心の底にも、平と同じようにいまだ諦められない思いが消えずに残っていたのだ。

 何度行き来したか分からない東京までの帰路で、平は堪えきれずに一人すすり泣く。母の手袋を手にし、朝顔は母が最後まで人に寄り添える優しい人だったことを知る。布団に入り、桑原(風間俊介)は朝顔に「よく我慢したね。お父さんの前だったからでしょ。今はもう我慢しなくていいから」と声をかけ、朝顔は大粒の涙を流す。朝顔と平、それぞれが互いを思って見せなかった涙。第7話は、2つの物語、朝顔と平を対照的に描くことでそれぞれの心情が見えてくる回であった。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『監察医 朝顔』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00〜放送
出演:上野樹里、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES/ジャニーズJr.)、坂ノ上茜、喜多乃 愛、宮本茉由、戸次重幸、平岩紙、三宅弘城、板尾創路、柄本明ほか
原作:香川まさひと
漫画:木村直巳
監修:佐藤喜宣『監察医 朝顔』(実業之日本社)
脚本:根本ノンジ
法医学監修:上村公一(東京医科歯科大学)
プロデュース:金城綾香
演出:平野眞、澤田鎌作
制作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao/

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