『火口のふたり』柄本佑&瀧内公美、“塗れ場のリアリティ”の秘密明かす 荒井晴彦監督は批判に反応
さらに瀧内は、撮影中の荒井監督とのエピソードも披露。「初日に荒井さんがバババッと来て、『賢治はよくわからない返事ばっかりしてるじゃん。直子はどう思ってるの?』ということを言われて、『あぁ』と思って。そのまま答えずに頷いて、荒井さんは戻られたんですけど、その気持ちはすごく大事にしなきゃいけないと思って、泣くシーンに繋がりました」。そんな荒井監督は「泣かせようとは考えてなかったんですけどね。『泣かないで』って言うんだけど何度も泣くので。でも出来上がったら瀧内の方が正解だったなって反省しています」と、瀧内の泣くシーンを絶賛。柄本も「僕は隣で寝ていたんですけど、カットがかかると瀧内さんのところに監督が来て、『もうちょっと淡々とできない?』(荒井監督)、『やっぱり泣いちゃいますね』(瀧内)、『え~泣いちゃう? なるだけ泣かないように』って(笑)。でも僕もあそこは意外でした。『そうか、泣くんだ』って」と、劇中の重要なシーンの秘話が明かされると、撮影当時を思い出した様子の瀧内の目には涙が浮かんだ。
MCの奥浜から濡れ場のリアリティについて問われた柄本は、「台本に全部動きが書かれているんです。最初のベッドシーンにしても、キスして、愛撫して、挿入して、そっから移動して……とかが事細かに全部書かれているんです。そっちの動きを覚える方が大変でした」と回答。「ああいうのって理にかなっているというか、シミュレーションしてるわけじゃないですもんね?」と柄本に問いかけられた荒井監督は、しばらく沈黙したのちに、「ちょっとAVを観たりね。ロマンポルノの頃から書いてた。初めてそういうことをする時と、別れる最後の時とで、対位は絶対違うじゃん。初めてでバックはさすがにいかないでしょ。気持ちとそういうことって絶対関連してるから、2人の関係性の中でどういうセックスなのかは書くべきだと思う」と自身の考えを述べた。瀧内も「本当に細かかったので。アクションシーンのようでした。一個一個覚えていくという感じで。荒井さんの書いている本が生々しかったんだと思います」と、濡れ場の生々しさは荒井監督の脚本によるものだと力強く語った。
鑑賞者の中では様々な議論があるという本作。荒井監督は気になった反応を聞かれると、「悪口は頭にきて覚えてます。この野郎って。プロでも素人でも嫌なんだけど、素人にTwitterで『説明台詞が多い』とか書かれると、『うるせぇよ! 俺、50年書いてるんだよ。言われたくねぇよ。わかってやってんだよ』って。本当にこれ言いたかった(笑)。『火口の“かこう”を“ひぐち”って読んでる奴らには言われたくねぇんだよ』って」と“荒井節”を炸裂させながらも、「批評とかよりも僕が一番嬉しかったのは、娘に『お父さん、三度目の正直だね』って言われたこと」と明かすと、会場は和やかなムードに包まれた。
最後に挨拶を求められた3人は、「2人しか出ていなくて、これだけ“欲”を映し出している作品もなかなかないと思うので、本当に多くの人に観てもらいたいなと思っています。良かったら『良かったよ』って伝えていただければと思います」(瀧内)、「きっといろんな感想などあると思いますが、良くても悪くても宣伝してください。良かったと思われたらマストですよ。むしろ知らない人にトントンと『火口のふたり』って言ってみたりね(笑)。憧れの荒井晴彦脚本でありしかも荒井監督の作品に出られた、僕としては大事な映画ですので、皆さんで広げていっていただけたら幸いです」(柄本)、「良くても悪くても、とにかく劇場に来てもらわないと。制作会社が危ないんですよ。僕らもギャラもらってないし(笑)。お客さんが来てくれれば、4作目撮れることに繋がると思うので。今日だけじゃなくて普通の日も来てほしいな。三度目(の鑑賞)ぐらいは寝てても構いませんので、とにかく来てください。よろしくお願いします」(荒井)とコメントし、舞台挨拶を締めくくった。
■公開情報
『火口のふたり』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:柄本佑、瀧内公美
原作:白石一文『火口のふたり』(河出文庫刊)
脚本・監督:荒井晴彦
音楽:下田逸郎
製作:瀬井哲也、小西啓介、梅川治男
エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎、森重晃
プロデューサー:田辺隆史、行実良
写真:野村佐紀子
絵:蜷川みほ
タイトル:町口覚
配給:ファントム・フィルム
レイティング:R18+
(c)2019「火口のふたり」製作委員会