『なつぞら』インタビュー

山口智子、朝ドラは「人生の始まり」 『なつぞら』で果たした年長者としての務め

「生きる力をくれたのが咲太郎」


ーー亜矢美さんは118話(8月15日放送)をもって新宿を去ってしまいました。咲太郎へはどんな気持ち抱いていたんでしょうか。

山口:亜矢美と咲太郎は、親子を「演じる」ことで、不思議な関係を築きながら人生の辛苦を共に乗り越えてきました。亜矢美にも結婚の約束をした人が戦争に行ったきり帰ってこなかったという悲しい過去があって……。愛する人を失いぽっかりあいた心の穴を埋めて、生きる力をくれたのが咲太郎でした。咲太郎は亜矢美にとって、最愛の息子であると同時に、人生のパートナーとしてなくてはならない存在です。だから亜矢美は、咲太郎の成長と巣立ちを祝福したい気持ちと同時に、ずっとこのまま心の恋人であり続けてほしい子離れできないジレンマに、自分自身戸惑います。最後にはそれを振り切って、自分の人生をもう一度生き直してみようと決意する亜矢美の心境は、現代の私たち女性みんなに通じるテーマでもあると思います。

ーー風車に留まらずに、一度旅立つのも亜矢美さんらしいですよね。

山口:そうですね。きっと咲太郎は、「絶対にお母ちゃんの面倒を見る」って言いだして、また余計な苦労を背負ってしまうような優しい子ですから。だからこそ、咲太郎の重荷になりたくない、対等の立場で互いに人生のパートナーであり続けたいという思いから、自分の人生というものをもう一回生き直してみようと決意し、新しい人生へのチャレンジへと一歩踏み出したのだと思います。

「不思議な生命体を見るような気持ち」


ーー今回のヒロイン役、広瀬すずさんの印象はいかがですか。

山口:本当に頼もしくて、“どっからでも来い”という揺るぎない存在感と力に溢れていて……憧れますね。あんなに堂々と、かつナチュラルで力が抜けていて、風のように爽やかで、どうやったらあんな素敵な子が育つのか、つい親御さんと同世代の立場の目線で、ほのぼのと眺めてしまいます(笑)。

 今までテレビで見ていたすずちゃんは“現代の女の子”というイメージでしたが、一緒にお仕事してみると、北海道編では素朴な田舎の少女として違和感なく演じているし、時代を超越したすずちゃんの魅力に改めて驚いています。あんなにつりズボンが似合う現代の少女がいるんだなぁって(笑)。

ーー現場でヒロインとして過ごしている広瀬さんを、山口さんはどう見ていますか?

山口:すずちゃんの毎日は、膨大なエネルギーを要する大変な日々です。でもその苦難の道を、あえて楽しんでしまおうというチャレンジ精神に溢れていて、すずちゃんの人間力は驚異的です。でもたまに、夕見子ちゃん(福地桃子)と一緒に本当の姉妹のようにじゃれ合いながら、「ヘン顔」をして無邪気に笑っている姿をみると20歳らしいあどけなさが可愛くて、不思議な生命体を見るような気持ちで、感動しながら眺めています(笑)。

ーーご自身がヒロインだった時の気持ちを、広瀬さんの姿を通して蘇ってきたりすることはありますか?

山口:すずちゃんを見ていると、ヒロインという立場に、かつて自分もいたことが信じられないです(笑)。当時の私はただの素人。次から次にふりかかる難題をどう乗り切っていたのか不思議でなりません。それが若さの力というものだったのか、朝ドラが生み出す魔法なのか、そこに飛び込んでいくことで、確かに何か奇跡のようなものが起きていたのかもしれませんね。

(取材・文=大和田茉椰)

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人、岡田将生、比嘉愛未、安田顕、仙道敦子、中川大志、山田裕貴、福地桃子、高畑淳子、草刈正雄 ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也、田中健二 ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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