『天気の子』は俳優の声優起用のひな形に 小栗旬や本田翼らキャスティングの効果を考える

『天気の子』から考える俳優の声優起用

 現在公開中の大ヒット映画『天気の子』。醍醐虎汰朗と森七菜という若手俳優が声優を務め、小栗旬、本田翼などの実力派俳優が脇を固める。アニメ作品であるならば、人気の高い実力派の声優をメインに起用したほうがいいという声も聞くが、『未来のミライ』を初めとした細田守監督の一連の作品、スタジオジブリ作品、またディズニー作品など、俳優をあえて声優として起用するケースは多い。本職ではない役者が声優を務めることのメリットと、役者が声優を務めることならではの魅力とは何なのか?

役者は、監督が色を塗る白いキャンバス

 映画『天気の子』は、ヒロインを助けるために奔走する主人公の森嶋帆高を醍醐虎汰朗、天気を操る不思議な能力を持ったヒロインの天野陽菜を森七菜が演じ、そのフレッシュな存在感が話題だ。2人とも俳優デビューして2年ほどの新人であり、本作が声優デビュー作になった。

 醍醐虎汰朗と森七菜の抜擢は、2人がまだ無名に近い若手俳優で、何色にも染まっていない真っ白なキャンバスであったことが大きい。そもそも主人公像や声のイメージ、話し方や振る舞い方などは監督の中で実に明確で、どんなに集客の見込める実力派声優であっても、イメージや演技がすでに固まっている者より高いポテンシャルを持った若手を育てるほうが、はるかに監督のイメージに近づけることができる。実際2人の声と演技には、余計なものがなくリアリティさを感じさせ、役どころとの違和感がなかった。演技が未熟な部分はあっても、2人とも役どころと同じ10代であるというリアリティがそれを補い、作品を観る者にとって心地よい没入感を与えてくれている。

 加えて『天気の子』は、アニメ映画でありながら、限りなく実写の感覚に近い作品であることも見どころの一つだ。光の捉え方や背景の緻密さは新海誠監督の真骨頂で、それは前作『君の名は。』でも話題になった。そうしたリアリティを追求した映像手法において、ともすれば違和感を与えてしまうのが、アニメ然としたキャラクターの絵とファンタジー要素を含んだ設定だ。その違和感を見事に埋め、ファンタジーを兼ね備えたリアルな作品へと昇華させているのが、2人の若手による飾らない自然さのある声と演技だろう。

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