『わたし、定時で帰ります。』インタビュー
『わたし、定時で帰ります。』スタッフが語る撮影の裏側 成功を支えたのは役者とのチームワーク
「実は私たちも定時に帰って飲みに行っていました」
――中丸雄一さんが演じる諏訪巧と種田晃太郎の対比も、盛り上がっていましたね。
八尾:結果的にすごくいい対比になったと思っています。当初、巧のキャラクターって、ちょっと晃太郎に似てしまいそうだったんですよね。でも、中丸さんが演じてくださったおかげで、ほっこり感が増しました(笑)。だいたいシーンのセリフが終わった後もしばらくカットをかけずに、ふたりがアドリブでキャッキャしてるのが微笑ましくて、そのまま採用しています。
新井:吉高さんと中丸さんは、アドリブ対決って感じで本当に面白くて。鼻を押して遊んでいるシーンなんか最高でしたよね。よく見ると中丸さんが「ん?」って、ちょっと間があるんですよ。きっと吉高さんのアドリブに“どう返そう”って迷ったと思うんですが、とっさに出た言葉が「強い〜っ!」って。あれは現場にいたスタッフみんな大爆笑でした。
八尾:カットがかかって、中丸さんが「今のリアクション、合ってましたか?」って聞いてましたけど、みんな正解なんてわからないから「いいよ、いいよ!」って(笑)。
ーー撮影現場を見学させていただいたんですが、すごく和やかで楽しそうだなと感じました。キャストのみなさんも「こんな現場なかなかない」っておっしゃっていたのが印象的だったんですけど、やっぱりこの雰囲気は主演の吉高さんによるものが大きいですかね。
新井:大きいですね。あとスタッフもみんな仲良いですし。いじりいじられやってるっていうか。
八尾:スケジュールが押すこともほとんどなかったですよね。結衣ちゃんが大体定時で帰るから夜のシーンも少なくて、私たちも定時に帰って飲みに行っていましたもんね。
新井:「また行くの?」って言われるくらい(笑)。
――そんな思い出深い作品の中で、おふたりが印象に残っているシーンやセリフはありますか?
八尾:うーん、どの話も好きなので選びきれないですね。例えば、2話で「あんたが思ってるほど時代は進んでないんだよ」みたいな感じとか、4話で結衣が吾妻(柄本時生)に大きな目標がなくてもいいじゃんっていう感じの言葉は、そういうことを考えている人たちにかけてあげたい言葉だなと思いましたし。7話のお父さんとのくだりも編集で見てて号泣しました。結衣の視点は常にフラットでいたいなというのが1個あって。「こういう人を正解」「こういう人を不正解」としない結衣の姿勢は、全話を通してずっと意識していました。毎回、脚本作ってる時も今回どれが1番言いたいことだろうかっていうのを、みんなで議論して。じゃあ「働きすぎるの何がダメなんだ」っていう、福永さん(ユースケ・サンタマリア)が突きつけてくる部分の答えは、ぜひ最終回で感じてほしいなと思っています。
新井:私も好きなシーンがありすぎて、逆にコレって出てこないです(笑)。ただ、『吉高由里子』という人の生き方を見て、楽しく生きようと思いました。色々思ってることはあるんでしょうけど、毎日楽しそうで。そうやって周りを明るくして自分が楽しそうに生きていけたらいいなって思いましたね。
八尾:フットサルしてる吉高さんが最高に可愛かったですよね。あれは5回ぐらいリピートで見ました。ボールを手で持っちゃうとことか、演技なのかわからないんですけど。いやー、これは天才的だなって思いましたけどね。
新井:こうやって仕事をすれば、現場って楽しいんだなとか、仕事って大変だけど、気の持ちようで毎日が楽しくなるんじゃないかなって。
「正解のない問いに、結衣を見て自問自答していただければ」
――最後に、このドラマのコピーでもある「あなたは何のために働いていますか?」に対して、おふたりなりの答えはありますか?
新井:なんだろう……私は趣味だから、かな。仕事が趣味という意味じゃなくて、ドラマが趣味で、好きなんですよ。たぶん、ドラマじゃなかったら、プロデューサー続けてないかもしれないですね……と思うけど。収入が半分になってもやり続けられるのかな。どうですか?
八尾:私も、物語を作るのが好きでやってるんですよね。ドラマでも映画でも、何でもいいんですけど。そういうものだったら多分辞めないかもしれない。もしかしたら漫画の編集者とかでも続けられるかもしれないですね(笑)。生活のためだけど、好きじゃないとできない……んじゃないかな。
新井:きっと、そんなふうに自問自答していただければいいと思うんです。自分は何のために働いているのか、どうしたら楽しく生きられるのか。これが正解、というものはないと思うので。
八尾:そうですね。仕事においても、プライベートにおいても、きちんと結衣の意志を描いたつもりなので。それを踏まえて、自分はどうなのかと考えていただけたら嬉しいです。
(取材・文=佐藤結衣)
■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/