『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』『天気の子』 今夏アニメ映画の注目ポイントを一挙解説!

注目の夏アニメ映画3作を一挙紹介!

『天気の子』

 というわけで、最後に7月19日公開の新海誠の『天気の子』。家出して上京してきたオカルト雑誌ライターの少年と天気を操る不思議な力を持つ少女との邂逅……というラブストーリー。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 邦画史上歴代2位という興行収入記録を打ち立て、ハリウッドでの実写映画化も決定している『君の名は。』から3年ぶりの新作ということで、アニメのみならず、今年の日本映画最大の目玉作品であることは間違いない。前作に続き、ヒットメーカーの川村元気を企画・プロデュースに迎え、キャラクターデザインの田中将賀、音響監督の山田陽、そして主題歌のRADWIMPSなど、主要スタッフの何人かは『君の名は。』から継続して参加している。対照的に、主演の醍醐虎汰朗、森七菜はオーディションで選ばれた期待の新人であり、本作でブレイクするかが注目されるところだ。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 前作が空前の大ヒットだっただけに、否が応でも期待が高まってしまうが、新海作品との関連ということでは、さしあたりの期待ポイントは、やはりタイトルにもなっている、本作のテーマでもある「天気」だろう。これももはや有名だが、新海誠といえば、何と言ってもそのデビュー作から観客の目を引く繊細で美しい「風景描写」が代名詞。逆光とレンズフレアを多用した眩い光と、形を変えながらたなびく雲の広がる風景は、デジタルアニメーションの可能性を最も象徴的に表現する格好のモティーフでもあった。『天気の子』で度々登場する雨のシーンは、2013年の『言の葉の庭』からの連続性を感じさせるが、それでも今回の新作は日光、雲、雨、虹、雪……といった、新海アニメが描いてきた、風景=天気の美麗なイメージが、ついにスクリーンに全面展開される可能性がおおいにある。『海獣の子供』『きみなみ』の海と、『天気の子』の空。今年の夏アニメは、それぞれアニメーション表現の新しい扉を開く風景が見られるかもしれない。

 日本アニメ誕生100年を迎え、『君の名は。』によって新時代に突入した2010年代最後の夏にして令和最初の夏に公開される話題作。さまざまな角度から楽しんで観てみるといいだろう。

■渡邉大輔
批評家・映画史研究者。1982年生まれ。現在、跡見学園女子大学文学部専任講師。映画史研究の傍ら、映画から純文学、本格ミステリ、情報社会論まで幅広く論じる。著作に『イメージの進行形』(人文書院、2012年)など。Twitter

■公開情報
『海獣の子供』
6月7日(金)全国ロードショー
原作:五十嵐大介『海獣の子供』(小学館 IKKICOMIX刊)
キャスト:芦田愛菜、石橋陽彩、窪塚愛流、稲垣吾郎、蒼井優、渡辺徹、富司純子
監督:渡辺歩
音楽:久石譲
キャラクターデザイン・総作画監督・演出:小西賢一
美術監督:木村真二
CGI監督:秋本賢一郎
色彩設計:伊東美由樹
音響監督:笠松広司
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃ 
製作:「海獣の子供」製作委員会 
配給:東宝映像事業部
(c)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
公式サイト:www.kaijunokodomo.com
公式Twitter:@kaiju_no_kodomo

『きみと、波にのれたら』
6月21日(金)全国ロードショー
監督:湯浅政明
脚本:吉田玲子
音楽:大島ミチル
出演:片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、川栄李奈、松本穂香、伊藤健太郎
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:東宝
(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
公式サイト:https://kimi-nami.com/
公式Twitter:https://twitter.com/kiminami_movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/kiminami_movie

『天気の子』
7月19日(金)全国東宝系公開
原作・脚本・監督:新海誠
声の出演:醍醐虎汰朗 森七菜
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
美術監督:滝口比呂志
音楽:RADWIMPS
製作:「天気の子」製作委員会
制作プロデュース:STORY inc.
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝
(c)2019「天気の子」製作委員会
公式サイト:https://www.tenkinoko.com/

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