『わたし、定時で帰ります。』“働く意識”の違いをどう受け入れる? 吉高由里子らの姿から学ぶこと

 「死んでしまいたい」と落ち込む三谷を迎えに行った結衣は、自分が定時帰りを徹底するようになった背景を明かす。新卒入社した会社で、結衣も三谷と同じように厳しい環境に放り込まれたこと。ある日、無理がたたって死にかけるほどの大ケガをしたこと。そして仕事に殺されないために会社を辞め、今の頑張らなくていい働き方にシフトチェンジしたこと……。

 このエピソードに、筆者も心の古傷のようなものが疼いた。結衣と同じように新人時代に、ぶっ倒れるまで働いた経験があるからだ。学生時代は3〜4年単位の短距離走だった。だが、社会で働くという何十年単位のマラソンに頑張り方がわからなかったのだ。倒れるまで行かないと、止まらない。立ち止まるなんて、考えられない。そんな時代を駆け抜けたことを思い出した。

 当時は、ドロップアウトする=負けだと思っていた。だが、この10年であっという間に常識は変わった。「倒れる前に逃げろ」という選択肢が“普通“にある。それが今の常識。だが、もしかしたらそれも10年後には「古い」と言われているかもしれない。

 そんなふうに俯瞰して見ること。それこそが、働き方改革の第一歩なのだろう。内田有紀演じる賤ヶ岳八重のように子育てと両立しながら仕事をこなすワーキングママ、という存在もその一例だ。一昔前は、職場にいるのは仕事最優先の人ばかりだった。だが、今は違うのだ。仕事以外に大事なものを抱えている人もいるということ。

 それが、家庭だけではなく、恋人との時間だったり、祖国の生活様式だったり、信じている宗教だったり、あるいは障がいと呼ばれる特徴だったりするかも知れない。誰もが同じ価値観ではないことを受け入れていく時代。だからこそ今、このドラマを通じて様々な考えの人と対峙し、想像力を豊かにしていくのだ。火曜10時は、働く意識をアップデートする時間に。そして、来週もドラマと向き合うためにも、結衣を見習って作業効率を上げていかなければ。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
TBS系火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、4月16日(火)スタート 毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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