『いだてん』森山未來×松尾スズキの師弟愛が涙を誘う “変化”が刻まれた第2章スタート

『いだてん』“変化”が刻まれた第2章スタート

 円喬を演じる松尾は公式サイトのインタビューで、孝蔵と出会った頃にはすでに肺を患っていた円喬の思いについて「身を持ち崩している孝蔵を何とか自分の後継者にと思いつつも、自分の体が持たないことが分かっていたのでしょう」と推測している。「まな弟子を預けなくてはいけない悔しさが別れのシーンにはあったように思います」と語る松尾。松尾は、別れのシーンで孝蔵を預ける噺家の胸ぐらを思いっきり掴み、「倍にして返せ」と目を見開いて訴えていた。孝蔵の才能を見出していたからこそ決断した別れだということが伝わる。森山と松尾の熱演は、孝蔵と円喬の深い師弟関係を視聴者の心に刻んだことだろう。

 第2章のはじまりを印象づけたのは、この2人の関係だけではない。元号が明治から大正へ移ったことで生じるほろ苦さも印象深い。初のオリンピックで湧いたはずの日本は、オリンピックでの敗北を受け、娯楽スポーツではなく強靭な肉体をつくるための体育の推進を求めていた。ストックホルムオリンピック編で四三が発した「我らの一歩は日本人の一歩たい」という台詞がむなしく空を切るように演出されていたのが苦々しい。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ/綾瀬はるか、生田斗真、杉咲花/ 森山未來、神木隆之介、橋本愛/杉本哲太、竹野内豊、 大竹しのぶ、役所広司
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
写真提供=NHK

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