Netflixなどの躍進によって大きな変化も? 外国映画のハリウッドリメイクが量産され続ける理由

外国映画のハリウッドリメイクなぜ量産?

 未だにハリウッド映画が席巻する劇場配給であるが、今後デジタル配信の躍進によって、リメイクの状況は大きく変わっていくかもしれない。世界各地にオフィスを持つNetflixは、英語以外のコンテンツも、全世界向けにオリジナルタイトルとして多数配信しているが、それらが世界的に大きな話題となることも少なくない。先日アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『ROMA/ローマ』(2018年)がその最たるところで、他には『エリート』などドラマシリーズが多いが、これまでハリウッドのリメイクを経由してしか知ることのなかった外国映画作品も、リメイクではなく直接的に観ることが、より普通になる可能性も考えられる。

 ところで、外国映画のハリウッドリメイクに関して、イギリスの大手新聞ガーディアンは「ロスト・イン・トランスレーション:なぜハリウッドは外国映画のリメイクを止められないのか」という記事の中で「これら映画は、それぞれの国に独特の、目に見えない何かを持っている。(中略)異星人が地球の大気で息をしようともがくように、これらの作品のいくつかは、大きく手を加えることなしにメインストリームのマーケットで生きていくことは難しい」と述べている。リメイク版の製作にあたっては、オリジナル版への忠実性と新しいオリジナリティを両立した絶妙なスポットを探し当てることが求められるが、ハリウッド映画がもつ大衆性ゆえに、オリジナル版の繊細さや、その国のもつ独特な雰囲気が失われることも多い。しかし『ディパーテッド』のようなケースがあるのも事実で、もともと香港の裏社会を舞台にした題材から、ボストンのアイルランド系ギャング組織と警察、それぞれの内通者をめぐるストーリーへとリメイクすることに成功し、外国映画のリメイクでアカデミー作品賞を獲った初の作品となった。

 映像コンテンツを鑑賞する方法が急速に変化する現在、外国の作品を観ることのハードルは今までになく低くなっている。しかし一方で、世界中の劇場公開における現在のハリウッドの強さを考えると、外国映画のハリウッドリメイクの動きは、今後しばらくは続くだろう。オリジナル版を越えることの難しさは常に存在しているが、原作へのリスペクトを残しつつ、アメリカ映画として、ストーリーの持つ新たな魅力を観ることができる作品が望まれる。

■神野徹
北海道出身。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で映画プロデュースを学び、その後メジャースタジオの長編映画企画開発部門などで経験を積む。

参照

https://www.theguardian.com/film/2019/jan/11/the-upside-miss-bala-remakes-hollywood-foreign-films
studiosystem.com

■公開情報
『たちあがる女』
3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ
配給:トランスフォーマー
後援:駐日アイスランド大使館
2018年/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/アイスランド語/101分/カラー/5.1ch/英題:Woman at War/G/日本語字幕:岩辺いずみ
(c)2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Koggull Filmworks-Vintage Pictures
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/tachiagaru/

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