アメコミ映画好きには嬉しいサプライズも? 『スパイダーマン:スパイダーバース』高評価の理由

『スパイダーバース』高評価の理由は?

 『スパイダーマン:スパイダーバース』はスパイダーマンをテーマにした長編アニメーション映画です。スパイダーマンのTVアニメはこれまでも何度か作られ放送されてきたのですが、劇場用映画として長編版が作られるというのは今回が初めてです。ぶっちゃけ、スパイダーマンというかアメコミ・ヒーロー映画人気に便乗した安易なアニメ映画と思っていたら大間違い! とても楽しく、映像や音楽がおしゃれで、なんと涙腺がゆるむエモーショナルな作品に仕上がっています。アメリカでも大ヒットで高評価! なんとアカデミー賞の長編アニメーション部門にもノミネートされています。

 この作品の魅力を説明する前に、前提となる知識を。実は、コミックの中では様々なパラレル・ワールドが存在し、その世界ごとに、その世界ならではのスパイダーマンがいる、という設定になっているのです。この概念をスパイダーバース(スパイダーマンのユニバース)と言います。本作では、僕らが知っている“白人ピーター・パーカー”のスパイダーマンが死んでしまって、黒人の少年マイルス・モラレスくんがスパイダーマンを襲名した(せざるを得なかった)世界が中心となっています。当然、マイルスくんはスパイダーマンになりたてで、全然うまくいかない。一方、ピーターの死はある重大な事件と大きく関わっており、その事件の影響で、次元を超えて様々なユニバースのスパイダーマンたちが、マイルスくんの世界に集まってしまいます。マイルスくんはこうした別世界のスパイダーマンたちとともに、事件の真相に迫り、街を救うため立ち上がります。【以下、一部ネタバレあり】

アニメ映画という方法だからこそできた楽しさ

 この作品の楽しさは、まずいろいろな世界のスパイダーマンが共演する、ということです。例えばしゃべる動物たちが暮らすギャグ・アニメのような世界(要はバッグス・バニーのような世界)から来たスパイダーマンは、“スパイダー・ハム”といって、ピーター・ポーカーという豚ちゃんが変身したものです。またモノクロのハードボイルドな世界(『シン・シティ』みたいな世界)からは、モノクロのままの“スパイダーマン・ノワール”がやってきます。綾瀬はるかさんの『今夜、ロマンス劇場で』で、モノクロ映画のヒロインがスクリーンからモノクロのまま現実社会に現れるような感じ。また、日本のアニメのような世界観から来た女の子、ペニー・パーカー(彼女は蜘蛛型のロボットに乗る)などです。

 各キャラは当然それぞれの世界に準じたテイストで描かれているので、これらが同じ画面の中に登場する違和感が面白いのです。モンキー・パンチさんの描くルパン三世と、『カリオストロの城』のルパン三世と、小栗旬さん版ルパン三世が同じ場面にいる、わけですね(笑)。これは実写でやったらギャグになってしまう。まさにアニメ映画だからできた表現、楽しさだと思います。

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