『イノセンス』市川実日子が出ていれば間違いない!? 役者に寄せられる“信頼感”が視聴者を動かす

 一つには、藤原竜也や佐藤健のように、活動の主軸を舞台や映画に置き、連ドラでなかなかお目にかかれない稀少性があるだろう。

 市川の場合は、『シン・ゴジラ』などの大ヒット映画で強烈な印象のリケジョを演じていたほか、荻上直子監督の『めがね』や、行定勲監督の『ナラタージュ』、石井裕也監督の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』、吉田大八の『羊の木』など、様々な監督の作品で、いずれも強い個性を放っている。

 また、前述の『けもなれ』など、野木亜紀子作品に多数出演している黒木華のように、市川は『すいか』などの木皿泉作品の印象も強く、「人気脚本家とのタッグ」ということもあるだろう。

 加えて、『メゾン・ド・ポリス』でおっさんワチャワチャチームの中にいながら、アイロンがけによって一人集中力を発揮する別ポジションの西島、『けもなれ』で引きこもっていた黒木華のように、作品の中で他者と交わらない隔絶された存在であることも、存在感を高める一つの要因になっているのではないだろうか。

 市川の淡々とした表情と、凛とした佇まいには、「群れない」「媚びない」「交わらない」「おもねない」空気が漂っている。そんな数々の役柄から結び付けてイメージされる本人像と、出演作の傾向から勝手に想像する「作品・役柄選びに対するこだわり」に対して、視聴者は安心感・信頼感を抱く。

 今は、ドラマが視聴率をとりにくい時代。スター俳優・女優が出ているだけでドラマを見るような人は少なくなっているし、SNSなどですぐに感想・評判を共有し合える状況もあり、「確かな作品を観たい」と考える視聴者が多くなっているのだろう。その「確かさ」の基準の一つに、脚本家や演出家があるように、市川のような役者個人に寄せられる「信頼感」が一種の「お墨付き」になっているのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■公開情報
土曜ドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』
日本テレビ系にて毎週(土)22時放送〜
出演:坂口健太郎、川口春奈、藤木直人、趣里、杉本哲太、市川実日子、志賀廣太郎、小市慢太郎、正名僕蔵、赤楚衛二、草刈正雄
脚本:古家和尚
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/innocence/

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