なぜディズニー映画の監督は2人必要なのか? 『シュガー・ラッシュ2』監督に真相を聞いてみた

「ベストなアイデアが勝てばいい」

ーー劇中ヴァネロペとラルフは、意見が割れてしまうことで、関係にもヒビが入ってしまいます。映画製作でもそのような場面が出てくると思うのですが、2人はどう対処するのですか?

ジョンストン:『シュガー・ラッシュ:オンライン』は、友情についての映画だ。だから、僕らが人生の上で経験した知恵を、この物語にも応用した。確かに製作していると、意見が合わないこともあるのだけれど、スティーブン・スピルバーグは「個人個人のエゴを持つのではなくて、映画作品にエゴをもたせる作り方をせよ」と言っていた。それと同じように僕らも、意見が合わなくてもベストなアイデアが勝てばいいっていう考え方なんだ。この作品もスタッフが500人以上関わっていて、僕らだけが「こうやります」と言っているのではなくて、色んな所から出てきたアイデアに対して僕たちが判断することもある。だから、お互いに話し合えるというのはとっても良いんだよね。

ーー大切なのは、意見をしっかり交換し合うことなのですね。

ムーア:批判を恐れないで自分たちが作ったものを見せたり、意見を交換することをしないと良い作品は作れないと思う。ディズニー・スタジオでは12週間から16週間の間で、映画が全体的にこういう風な作品になりますというのを、ビデオ絵コンテや仮に声を入れて、ある程度見えるようにしなければいけない。それを12週間から16週間で1本つくって、みんなから意見をもらって、また12週間から16週間かけて作る、というのを7回くらい繰り返して映画が出来上がっていくんだ。監督というのは作品を森のように見なきゃいけないんだけど、12週間から16週間の終わり頃にはあまりにも入り込んでしまって何も見えなくなるんだ。木の皮しか見えなくなって「森が見えない!!」という状態の時に仲間に見てもらうと、やっと他の木が見えるようになる。どうしてそうなるのか僕はいまいち分からないのだけど、これが僕らのスタジオのプロセスだし、日々の生活にも応用しようとしている。完璧にできてるとはいい難いけど……。大切なのは自分がすべての答えを見ているのではないと思うことではないかな。人生を生きていく上でガイドとなるのは、外側から来ることが多いからね。

ーーインターネットはもはや当たり前のツールになりました。それでも本作の世界は、魅力的で、たくさんの驚きと発見がありました。

ジョンストン:『ズートピア』の絵のアプローチと非常に近い考え方なんだけど、インターネットの世界は、美しいけど角を曲がればネガティブな側面も持っている。最高のツールだし最高の発明だし、僕らの中心にインターネットはきっとある。ヴァネロペも「美しい! 奇跡だ!」と言うよね。でも僕はナイーブなわけじゃないから、負の側面を持っているということを分かっている。人を傷つけたり、ラルフがコメントによって傷つけられたりしたよね。みんながお互いにネット上でも優しい心で触れ合えられれば、2人が到着した時のような美しい世界になると思うよ。

ーームーアさんは、90年代に『ザ・シンプソンズ』を監督されていましたが、インターネットをこんなにも魅力的に映し出せるのは、アニメ製作を通してテクノロジーの恩恵を誰よりも受けていたからなのかと感じます。

ムーア:間違いなく僕らの仕事は楽になった。以前だったら人物や場所、参考にしたいものをグーグルで簡単に見つけられなかったからね。例えばローマを参考にしたくても、スタッフに頼んで、図書館に行ってコピーを取ってもらって、数日後に貰う感じだった。しかも質が悪いんだ(笑)。でも、例えば、飛行機に慣れてしまっている世代からすると普通のことでも、なかった人からすると空を飛べるなんて奇跡的なことだよね。車にせよ飛行機にせよインターネットにせよ、見方を変えるだけで素敵な物語ができると思っているんだ。

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
12⽉21⽇(⾦)より、全国4DX劇場にてロードショー
監督:リッチ・ムーア、フィル・ジョンストン
製作:クラーク・スペンサー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney. All Rights Reserved.
公式サイト:Disney.jp/SugarRushOL

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