高橋一生、戸田恵子と涙の対峙 『僕らは奇跡でできている』2人を繋いだ田中泯の包容力

 演じているのは、その渋い存在感で、軽快なストーリー展開に重みと深みを与えている田中泯。今回も、戸田が演じる山田の狼狽する様子を静かに受け止めている。公開中の映画『人魚の眠る家』でも田中の存在は大きい。篠原涼子と西島秀俊演じる夫婦の娘が不慮の事故により命を落とすことから始まる物語を描いた作品で、彼が演じるのはその娘の祖父だ。突然の不幸に胸を痛めつつも、ことの成り行きを冷静に、俯瞰的に見守る存在である。分かりやすい言葉や行動で感情を表出させるのではなく、佇まいや些細な仕草に感情を滲ませる。俳優や踊りを生業とする、表現者である田中だからこその成せる業なのだろうか。この『僕らは奇跡でできている』での言葉の一つひとつが一輝への訓示であることも手伝って、彼が口にするとまるで格言のように私たちにもジーンと響いてくるのだ。

 ラストで一輝は、「(山田さんが)家政婦か母親なのかは重要じゃない。重要なのは、山田さんが存在していること」と口にし、「山田さんから生まれてきて良かった」と続ける。山田が出ていく原因ともなった“タコ”を、一輝は嫌なことの象徴だと思い込んでしまっていたが、実際には、食べられなくなるほどに、好きの象徴だったようである。そして二人はタコ料理を笑顔で囲む。なんとも温かな幕切れであった。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■放送情報
『僕らは奇跡でできている』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:高橋一生、榮倉奈々、要潤、児嶋一哉、西畑大吾(関西ジャニーズJr.)、矢作穂香、北香那、広田亮平、田中泯、トリンドル玲奈、阿南健治、戸田恵子、小林薫
脚本:橋部敦子
音楽:兼松衆、田渕夏海、中村巴奈重、櫻井美希
演出:河野圭太(共同テレビ)、星野和成(メディアミックス・ジャパン)、坂本栄隆
プロデューサー:豊福陽子(カンテレ) 、千葉行利(ケイファクトリー)、宮川晶(ケイファクトリー)
主題歌:SUPER BEAVER「予感」([NOiD] / murffin discs)
オープニング曲:Shiggy Jr.「ピュアなソルジャー」(ビクターエンタテインメント)
制作協力:ケイファクトリー
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokura/index.html

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