吉田羊×太賀『母さんがどんなに僕を嫌いでも』対談 「一本の筋を通して表現したかったんです」

 太賀「歌川さんが喜んでくれたらそれでいいと思えた」

ーー歌川さんとのやり取りで印象に残っていることはありますか?

吉田:歌川さんは、しょっちゅう現場で泣いていましたね。彼の中で思い入れの深いエピソードのシーンでは、撮影の合間にモニター前で号泣していました。

太賀:色んな思いを巡らせながら、歌川さんはモニターを見ていたと思うんですけど、本番が終わってオッケーが出た後は、僕らのところに近づいてきて「本当に良かったです」って言ってくれたんですよね。それが本当に嬉しくて。この作品が、見てくれる人にどう評価されるのか分からないですけど、とにかくこの人のためにやりたい、歌川さんが喜んでくれたらそれでいいと思えたんですよね。

吉田:ああいう風に泣けること自体が、きっと彼にとっては大事なんだと思うんです。やっと自分の母のこと、人生のことを受け入れられるようになったからこそ、過去のこととして泣けるようになったのかなと彼を見ていて感じました。

ーー撮影現場の雰囲気はいかがでした?

吉田:太賀くんとのシーンに関しては、常にピリピリしていました。だけど、それがよかったのかなと思いますね。

太賀:あの緊張感が、芝居をする上でも必要でしたよね。

吉田:意識的に、横にいてもほとんど太賀くんとは話さなかったし、一緒にご飯も食べないようにしていましたね。

ーーでは、撮影を終えてからようやく仲が深まった?

吉田:そうですね。太賀くんって、こんな風に笑うのかみたいな(笑)。

太賀:ようやく気が楽になった感じです(笑)。

ーー森崎ウィンさんら他のキャストの方々とはいかがでしたか?

太賀:僕は、彼らとはコミュニケーションを多くとろうと思っていましたし、彼らもそう思っていたんじゃないかな。一緒にご飯を食べに行ったり、旅館に行くシーンの撮影の前日に一緒にお酒を飲んだりしました。それがあったからこそ、羊さんと対峙するシーンで、緊張感を持ってやれたのかなと思います。劇中でも、友達が寄り添ってくれたからこそタイジは母・光子に向き合えたので、羊さんとのやりとりとはまた違う意味で、ものすごく重要な関係だったと思いますね。

吉田:私は劇中通り、孤独でした(笑)。でもあえてそういう環境を自分で作りましたし、太賀くんの時も、子役の小山春朋くんの時も一切スキンシップを取らずに彼を無視し続けていましたね。でも、彼のクランクアップの日にもう会わないと思って、「今回はありがとうね」と言ったら、「僕、羊さんに嫌われてると思ってました」と言われて(笑)、抱きしめて「好きだよ!」って伝えました。

ーー吉田さんはドラマ『中学聖日記』(TBS系)、映画『ハナレイ・ベイ』、太賀さんもドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、映画『50回目のファーストキス』など、お二人とも作品によって異なる印象を受けます。自身で、演技をするにあたって常に意識していることはありますか。

吉田:え、聞いてみたい(笑)。

太賀:いやいやそんな(笑)。でも、みんなそうかもしれないですけど、自分の中で役を固めすぎないというのはありますね。自分の中では心づもりだけ決めて、あとは演出家さんや共演者の方と呼応していくようにやれたらいいなと。ちゃんと呼吸して会話のキャッチボールになるように、独りよがりにならないようにというのはなるべく心がけていますね。だからいつも素敵な方とお仕事したいなという気持ちでいます。

吉田:私も基本的にスタンスは太賀くんと一緒で、あまり決めすぎずに現場に入りたいですね。現場に入って、実際に相手役の方とお話をしたり、目に入るちょっとした小道具だったりで、台本では感じなかった感情が生まれたりするんです。だから、自分だけで作ろうとしないというのは心がけています。あと、演じるキャラクターの日常が見える演技をしたいなと思っています。そのキャラクターの生活における癖みたいなものを考えるのが好きですね。

(取材・文=島田怜於/写真=伊藤惇)

■公開情報
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、イオンシネマほか全国公開中
出演:太賀、吉田羊、森崎ウィン、白石隼也、秋月三佳、小山春朋、斉藤陽一郎、おかやまはじめ、木野花
原作:歌川たいじ『母さんがどんなに僕を嫌いでも』(KADOKAWA刊)
監督:御法川修
脚本:大谷洋介
制作プロダクション:キュー・テック
配給・宣伝:REGENTS
2018年/104分/5.1ch/シネマスコープ
(c)2018「母さんがどんなに僕を嫌いでも」製作委員会
公式サイト:hahaboku-movie.jp

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