『中学聖日記』は社会に根ざした作りに 『Nのために』と共通するテレビドラマならではの演出

『中学聖日記』は社会に根ざした作りに

 他のキャラクターも全体的にこってりしていて、裏サイトの書き込みや生徒たちの聖に対する風当たりの強さ。親からの反発などは、良くも悪くも暑苦しくてジメジメしている。チーフ演出・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子、制作・ドリマックスという座組は、湊かなえ原作小説の映像化に長けたチームとして知られている。中でも『Nのために』(TBS系)は犯罪ミステリーでありながら、瑞々しい青春群像劇としても高く評価されたのだが、『中学聖日記』の印象は『Nのために』の序盤で描かれた青春ドラマのテイストに近い。あの作品も骨格のしっかりした湊かなえの原作小説に、ウェットな肉付けを施すことで、テレビドラマならではの作品に仕上がっていたが、そういう資質がこのチームにはあるのだろう。

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 それにしても、本作を見ていると時代の変化を感じる。教師と生徒の恋愛を描いたドラマは昔からあり、男性教師と女子生徒の場合は、『おくさまは18歳』(TBS系)のように、表向きはタブーでも、どこかで羨ましがるような空気があった。これが女性教師と男子生徒だと『魔女の条件』(TBS系)のように、女教師を魔女と呼ぶような風当たりの強さがあり、これは『中学聖日記』にも引き継がれているが、近年は男女問わず、大人が未成年と、恋愛や性行為をすることに対する反発は強くなっている。これは1999年に児童買春・児童ポルノ処罰法が施行され、援助交際(少女買春)の取締まりが強化されて以降の変化だろう。

 『中学聖日記』も、教師と中学生との恋愛なんて気持ち悪いという批判が多いのだが、本作の場合はむしろ、漫画ではあまり描かれない同僚の教師や親の視点が強調されていて、そういった世間の批判と同調した作りに見える。

 『魔女の条件』が90年代に受け入れられたのは、そこに“滅びの美学”があったからだ。つまり、社会に居場所のない大人と子どもの逃避先として恋愛関係になるのも仕方がないと、視聴者に受け入れられたのだが、『中学聖日記』はもっと社会に根ざしたものとして描こうとしているように見える。そのため、メロドラマとしては煮え切らないものを感じるのだが、そもそも描きたいことが違うのだろう。

 ドラマ版は漫画とはまったく違う結末になるらしく6話以降はほとんど別モノという感じだが、果たしてどこに着地するのか? 最後まで見守りたい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■公開情報
火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/

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