千葉雄大本人にも重なる主人公・新見の姿 『プリティが多すぎる』が描くリアルタイムの“Kawaii”

 大崎梢の同名小説がドラマの基になっている。小説では新見の新たな配属先は原宿系ファッション誌ではなく、「Pretty Pop Pure Pipin 女の子はPが好き」がキャッチコピーのローティーン向け月刊誌の編集部だ。ドラマはローティーンのファッションを海外でも認知されている“原宿Kawaii”に置き換え、カンヌでワールドプレミアを開催、アジア各国でも同時に放送されている。

 原作ではPipin編集部に異動になって完全に腐っていた南吉が、編集部員やカメラマン、スタイリスト、そして中高生のモデルや熱心な読者の女の子たちから刺激を受け、仕事に対するモチベーションを取り戻していく。大人たちはよりよい誌面を作るために情熱を注ぎ、モデルたちは学校の延長のような現場を楽しみつつも切磋琢磨しながら上を目指す。そんなプロフェッショナルな人々を活写している、キャッチーなタイトルから想像できない熱いお仕事小説だ。

 小説はプロ意識の高い中高生モデルたちがとても魅力的だったため、彼女たちが実写化されないのは残念だったが、ドラマはPipinトップモデルのキヨラ(長井短)や人気インスタグラマーの心寧(武田玲奈)、Pipin読者で柏崎編集長の娘の美麗(森山あすか)、カリスマショップ店員のレイ(黒羽麻璃央)らが登場し、南吉にPipin流の“かわいい”を指南する。彼、彼女たちのファッション、竹下通りはもちろん原宿の街のあちこちで撮影されたシーンなど、リアルタイムのKawaiiを感じられる見どころがたくさんある。

 「新見ってさ、女子みたいな顔だよな」とからかわれた少年時代。文化祭の出し物で白雪姫役に抜擢された高校時代。南吉はかわいい顔に生まれたばかりにいやな思いをしてきた。それがトラウマとなり、“かわいい”を拒否し、“かわいい”にこだわる人たちを見下している。演じる千葉本人も間違いなく「かわいい」と言われて育ってきたことだろう。これだけかわいい人が“かわいい”を嫌悪しているというのも、文芸への未練が断ち切れない南吉のねじれた自意識を端的に表している。

 11月15日深夜に放送される第5話では南吉が出した企画が初めて通り、南吉主導で撮影が行われる。第3話では酔った利緒からキスをされ、動揺していた南吉。すでにお互いを意識しているのになかなか素直になれないふたりの恋の行方も気になるところだが、今回は恋よりPipin編集者として一歩前進する南吉の姿が見られそうだ。

■古閑万希子
ライター。映画評や映画ノベライズを手掛ける。

■放送情報
『プリティが多すぎる』
日本テレビにて、毎週木曜24:59〜放送
出演:千葉雄大、佐津川愛美、小林きな子、矢島舞美、池端レイナ、黒羽麻璃央、長井短、森山あすか、中尾明慶、堀内敬子、杉本哲太
原作:大崎梢『プリティが多すぎる』
脚本:荒井修子、渡邉真子
音楽:西口悠二、Chocoholic
制作:千野成子、 池田健司
プロデューサー:小田玲奈、松永洋一(R.I.S Enterprise)、森有紗
演出:久保田充ほか
制作プロダクション:R.I.S Enterprise
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/pretty/

関連記事