異色の朝ドラ『半分、青い。』とは何だったのか? 秋風羽織の“3羽の鳥”に込められていたもの

 『半分、青い。』(NHK総合)が終わった。新しい朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)はもう始まってしまったが、ネット上で様々な賛否両論を巻き起こし、話題を呼んだ問題作『半分、青い。』とは何だったのか。

 不思議なドラマだった。28歳の漫画家という夢の挫折以降、異色の朝ドラヒロイン・鈴愛(永野芽郁)は何かをやってみてはすぐに挫折する行程を繰り返した。回り道に回り道を繰り返し、自由奔放で直情的な彼女と、どんどん増えていく個性的な登場人物たちと、唐突な時間経過に当惑したことは何度となくあった。だが、『半分、青い。』から目が離せなかった一番の理由は、このドラマが皮肉にも「何かを失う」瞬間、それこそ朝ドラ史に残るのではないかというほどの力のある、凄まじい光景を見せつけてきたからだ。その最たるものは、才能が枯渇した27歳の鈴愛が足掻きつくし、周囲を攻撃して回る時の狂気を帯びた表情だったわけだが、それから多くの死とそれに向き合う登場人物たちの姿が描かれ、最終週の裕子(清野菜名)の死に行き着いてしまった。

 裕子の死の予兆は、第144話でボクテ(志尊淳)と共に揃って白系の服を着て鈴愛と律(佐藤健)のオフィスに唐突に現われるところから始まっている。「一度息の根を止めてしまった作品を生き返らせよう」とするボクテは生に向かい、一方の裕子は、彼女がこれまでずっと求めていた「居場所」を見つけたと話し、その一方で「私を繋ぎとめてよ、私を生きる世界に連れ戻して」と「生きる塊」である鈴愛に対して呼びかけるのである。もう既に死の世界へ足を踏み入れようとしているかのように。

 最終週の序盤は、いささか詰め込みすぎのようにも感じた花野(山崎莉里那)のいじめ問題だったが、これは単にいじめ問題を扱うためだけではなく、花野と鈴愛の転校を巡る話し合いで「逃げていいの?」「違うよ、かんちゃん、逃げるのではない」と会話することに意味があったのではないのか。裕子もまた「逃げて」よかったという可能性を、物語はそこで密かに呈示している。だが彼女は逃げなかった。震災当日、患者たちを上に上げ、自分は寝たきりの人や集中治療室にいる人など動けない患者に寄り添い、亡くなった。裕子の話は、単なる美談で終わらせられない何かがある。

関連記事